さて、では前回の続き。『腸閉塞が起こるとどうなるか』症状、検査、治療、手術、各種について解説していきます。
腸閉塞
前述の通り、消化管は1日に7~10Lの水分が循環していますが、癒着や狭窄などによって腸管の動きが完全に停まってしまった場合、消化物は下へ送られることができなくなります。水分は極めて吸収されにくくなり、消化管に溜まり、水位が上がり腹圧が上がります。
小腸の大部分は消化物と水分とガスで満たされ、ほぼ胃の近くまで溜まります。
こうなりますと、水分の再吸収は完全にできなくなり循環がされなくなります。
となると、溢れます。強烈な吐き気とともに嘔吐を繰り返すようになります。
また、水分の吸収ができずお腹に溜まっていく一方なので、極度の脱水状態になります。
これが『腸閉塞(イレウス)』ですね。
腸閉塞の原因による区別
厳密には腸閉塞にはちょっとだけ違い(区別)があります。
狭窄などによって物理的に詮をされて塞がれてしまった状態での腸閉塞を『機械的イレウス』といい、
術後の腸管麻痺や癒着などによって蠕動運動が阻害された状態での腸閉塞を『麻痺性イレウス』といいます。
いずれにせよ、処置は変わりませんが、もし腸閉塞になったら「どちらかな?」と自分の行動、とりわけ食事などを振り返ってください。再発防止のためにも自分で以後気をつけて回避できることはしていきましょう。
腸閉塞の主な症状
吐き気と嘔吐の他に、便秘(蠕動運動ができないため)、腹部全体の痛み、腹部膨満(消化物と水分とガスでゴム毬のようにパンパンになります)、発熱、頻脈などがあります。
※お腹を軽く叩くだけで、ボンボンっと、楽器みたいな音が鳴るほどです。
特殊なケースとして、『絞扼性(こうやくせい)イレウス』はお腹の一部が持続的に痛むのが特徴で、腹膜に炎症が起きたときにみられる腹膜刺激症状などが現れることがあります。
絞扼性イレウスは、通常の腸閉塞と異なり血行障害があり、腸重積や鼠径ヘルニア嵌頓(そけいヘルニアかんとん)、腸軸捻転症(ちょうじくねんてんしょう)などにより腸管がねじれることが原因です。
IBDによくみられる腸閉塞とは異なり、命に関わる場合もありますので緊急性が極めて高いです。
腸閉塞の検査
まず病歴に関して問診が行われます。(クローン病の場合はとにかく判断が早いです。原因がわかっているため)
症状が現れた時期や腹痛の程度などのほか、腹部の手術歴の有無、癌・ヘルニア・クローン病などの病気の既往歴の有無、内服薬の有無などについて確認します。
また身体所見として、腸蠕動、腹部の膨らみ、腹膜刺激症状、腸雑音などを確認したり、鼠径部(そけいぶ)を観察したりします。
問診でイレウスが疑われたら、血液検査を行って脱水の有無を確認し、同時に腹部のX線検査を行います。
X線検査ではイレウスに特徴的な腸管の拡張やニボー(腸管内にガスと液体がたまり、その境がX線に画然とした鏡面像として水平に映し出されたもの)の有無を確認します。
X線検査で疑いが残れば、より正確に診断するため造影CT検査を行います。造影CT検査では閉塞部位や閉塞の程度、血行障害の有無などを確認します。
造影剤を使った検査ができない場合には単純CT検査が行われます。
その他、有用な検査に超音波検査があります。超音波検査では腸管内の貯留物の程度や腹水の有無、腸蠕動の低下・亢進(こうしん)などについて確認します。
ただの腸閉塞か緊急性の高い絞扼性イレウスかを判定するために単純X線検査以外の検査を行うのですが、
たいがい、問診と症状で腸閉塞であることは確定でき、X線で確認します。その他の検査は後回しにしてとにかく『イレウス管(後述)』を先に入れます。
でないと嘔吐が止まらないので。
クローン病とわかっている場合、どこの部位に閉塞がみられるかなどは少し症状が落ち着いてから検査することが多いです。
腹部のX線写真(模型を頑張ってX線画像に見えるように加工しました)
ニボーはこのように水平に見えます。↓
腸閉塞の治療
イレウスの治療には保存療法と手術があります。
●保存療法(絶食と補液とイレウス管)
基本はこちらになります。食事や飲水を完全に中止して胃を休めつつ必要な水分などを点滴静注で補い、鼻腔から腸までチューブ(イレウス管)を挿入して腸の中の内容物を吸引して腸管内の圧力を下げます。
イレウス管は、口以外の出口を作ってあげる、ということですね。イレウス管の先には袋がついていて、腹圧によって消化物は上に押し出され、イレウス管を通って外(袋の中)へ出ます。
こうすることで吐かずに消化物を外へ出すとともに、徐々に腹圧を下げ消化器の浮腫を軽減していきます。
※イレウス管は小指の太さほどでしょうか。十二指腸かそれより先まで挿入するため、チューブはへたらないよう非常に硬いものです。処置中は鼻も喉も痛く、ゲーゲー吐きながらになります。かなり、きっつい処置です。
●手術の場合
保存療法でも症状が改善しない場合に、狭窄ごと切除するといった手術をする場合もあります。また血行障害のある絞扼性イレウスなどに対しても適応です。
最近は腹腔鏡による手術が導入されつつあります。
狭窄や腫瘍などの閉塞性が原因の場合は、消化管内の減圧を行ったうえで可能であれば腫瘍を腸管ごと切除し、その後残った腸管同士をつなぎ合わせます(吻合)。吻合できない場合は人工肛門をつくります。
癒着が原因の場合は健常者でしたら癒着部分を剥がしますが、腸管の損傷が激しい場合は腸管を切除する必要があります。
しかし、クローン病の場合、癒着を剥がすだけの手術は基本的にしません。その術式も傷を作る行為ですので潰瘍の原因にもなりますし、言い方が乱暴になりますがクローン病は癒着不可避なので必ず生涯ついてまわるものです。
しょっちゅう癒着を剥がす術式を行うわけにはいきませんので、ですから腸閉塞になりにくい食事療法が必要になるわけです。
また、絞扼性イレウスでは腸管壁の血管が圧迫されて血行障害が起こることで、出血や潰瘍、穿孔、腹膜炎などが生じ、死につながるリスクもあるため早期の治療が必要になります。
血行を再開させるため手術によって腸管のねじれ部分や折れ曲がった部分を修正します。ただし、腸管が壊死してしまった場合には腸管の切除・吻合が行われます。
腸閉塞については以上になります。次回からは腸管外の合併症についてお話します。
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