6月の映画まとめ(2026)
このシリーズは、きくらげの映画鑑賞メモです。
ネタバレを避けた軽いあらすじと、見終わった直後の印象だけを残しています。
今月は忙しくてあまり観れませんでしたが、社会制度スリラー、モキュメンタリー、POV、デスゲーム、シャラマン作品まで、かなりクセのある作品が並びました。
ホラーだけでなく、アクションや風刺、社会問題を扱う作品も多く、単純に怖いだけではない月だった印象です。
※この記事ではネタバレを避け、個人視聴ログとして簡単な感想のみをまとめています。レビュー⭐評価はしていません。あくまでも個人の印象です。
一部の作品については、別館にてネタバレ込みで深掘りトークを行っています。
興味のある方は、別館「ホラー館」ラベルをご覧ください。
■ パージ シリーズ(2013〜2021・アメリカ)
※シリーズまとめ
【シリーズ概要(ネタバレなし)】
『パージ』シリーズは、近未来のアメリカを舞台に、年に一度だけ12時間すべての犯罪が合法化される制度“パージ”を描くスリラー。
この夜は警察も救急も機能せず、人々は安全な場所に隠れるか、自ら外へ出て暴力に参加するかを選ぶことになる。
第1作は、裕福な一家の家に助けを求める人物が現れたことで、閉鎖された自宅が一気に危険地帯へ変わっていく密室型の物語。
『パージ:アナーキー』では舞台が街へ広がり、制度の中で生き残ろうとする人々のサバイバルが描かれる。
『パージ:大統領令』では政治的な対立が前面に出て、パージ制度そのものをめぐる争いが強まっていく。
『パージ:エクスペリメント』では、この制度がどのように始まったのかという実験段階が描かれる。
『フォーエバー・パージ』では、決められた時間を超えて暴力が続き、制度が社会全体を壊していく段階へ進む。
シリーズ全体としては、暴力解禁という極端な設定を通して、格差、政治、治安、社会の分断を描くディストピアスリラー。
▶感想:
人気シリーズであるけど、個人的にはあまり好みではなかったですね。シリーズが進むほど、密室ホラーから社会派アクション寄りに広がっていく印象。
そもそも論、パージ法というイカれた法律が制定されてしまう状況の設計があまりにも弱すぎる。日本だと『バトル・ロワイアル』なら、違う歴史を歩んだ架空の日本・敵国がいる・戦時下、という土台があるからイカれた法律があってもおかしくはないかも、って思えるわけだけど、そこが弱いと、いや、こんな法律絶対できないでしょう、ってなる。
1作目はそのイカれた法律の中で1つの家庭での家の中だけでの12h。ここは低コストで強いネタでウケたんだよね。で、後から後からシリーズ追うごとに設定の継ぎ足しをしていくわけだけど、それでも弱いんだな。
あと、『すべての法律が合法』なのに、ほぼ殺人しかフォーカスされないのも、こんなイカれた法律があるのに家や施設の防御力がやたら低いのも引っかかるところ。
なので、まずこのパージ法を、「とにかくそういう設定」とだけ受け入れればモヤらずに楽しめます。
イカれた法律下での12時間のヒューマンドラマ、という見せ方なので、シリーズいくらでも作れると思うし、暴力描写より、制度が社会を歪ませていく感じなので、グロさもそんなにないし、結構幅広い方が見れると思います。
■ 最強殺し屋伝説国岡 フレイムユニオン[私闘編](2025・日本)
監督:阪元裕吾
【あらすじ(ネタバレなし)】
殺し屋として活動する真中卓也は、うまくいかない仕事や生活の中で、自分の限界にぶつかっていた。
ある失敗をきっかけに殺し屋協会から謹慎処分を受け、さらに父親によって実家へ連れ戻されてしまう。
しばらくして国岡昌幸が様子を見に行くと、そこには家の手伝いに徹する、以前とは違う真中の姿があった。
しかし国岡との会話を通じて、真中の中にまだ殺し屋を続けたいという気持ちが残っていることが見えてくる。
自分の才能や立場に悩みながらも、真中は再び前へ進むために動き出す。
国岡との関係性や修行の過程を通して、殺し屋としての成長と再起が描かれていく。
モキュメンタリー的な日常感とアクションを組み合わせた、国岡シリーズの一作。
▶感想:
国岡シリーズらしい現場感と日常感がしっかりありました。
真中側の成長物語としても観られるので、単なるアクションだけではない印象。真中がね、とにかくクズ。これまでもクズだったけどクズ度合いがヤバい、で、そこからの成長物語なので面白かったですよ。国岡さん役の伊能さんのアクションもどんどんうまくなってるし技の幅広がってるし、今回からRioさんも参加、さらに剣の殺陣もあり、国岡シリーズとしても大きく成長した感じですね。坂元組お馴染みの役者さんたちが、毎度良い空気感で、その空気感がモキュメンタリーとも合ってて良いんですよね。
まさに阪元作品らしい軽さと痛快さが出ている一本でした。
■ オールド(2021・アメリカ)
監督:M・ナイト・シャマラン
【あらすじ(ネタバレなし)】
休暇でリゾートを訪れた家族は、ホテルの案内で人里離れた美しいビーチへ向かう。
そこは穏やかで隔絶された場所に見えたが、やがて奇妙な異変が起こり始める。
子どもたちの成長が異常に早く進み、大人たちの身体にも不可解な変化が現れる。
人々はビーチから離れようとするが、なぜか外へ出ることができない。
限られた時間の中で、彼らは自分たちの身に何が起きているのかを探ろうとする。
家族関係や人生の残り時間が、極端な状況の中で浮かび上がっていく。
閉鎖空間と時間の異常を組み合わせた、ミステリー寄りのスリラー。
▶感想:
発想はかなり面白い作品。ただ、設定の使い方や終盤の説明は好みが分かれそうでした。面白いは面白い、ホラーやスリラーをよく見る人ではないビギナーさんたちでしたらストレスなく純粋に楽しめると思います。けど、ベテランさんだとモヤり要素があって、そこが惜しい、惜しいのがシャラマンあるある。
この作品は、人を見せるか敵を見せるかで変わる作品で、謎の超常現象に振ればかなりの部分は受け入れられるし、ヒューマンドラマに寄せれる、『CUBE』のように浜辺の密室に振ればシチュエーションスリラーみたいになる、敵の存在を出すなら派手めに勧善懲悪に振れる、けどどこにも振りきれてないから、粗がでちゃう。そういう惜しさ。
それでも、面白いは面白い作品でした。
■ サバイバル・フィールド(2009・スペイン)
監督:ダニエル・ベンマヨール
【あらすじ(ネタバレなし)】
都会で暮らす若者たちは、極限のスリルを味わうため、森の中で行われるサバイバルゲームに参加する。
ルールに従ってチームに分かれ、ペイント弾を使ったゲームが始まるが、途中で状況は一変する。
本来なら安全な遊びのはずだったフィールドで、実弾による攻撃が発生する。
参加者たちは何が起きているのか分からないまま、森の中で命を狙われることになる。
仲間を信じてよいのか、運営側に助けを求められるのかも分からず、不安は広がっていく。
遊びだったはずのサバイバルゲームは、本物の殺し合いに近い状況へ変わっていく。
森という閉鎖的なフィールドを使った、デスゲーム寄りのサバイバルスリラー。
▶感想:
サバゲーかと思ったら、デスゲーム巻き込まれのテンプレそのものの内容でした。
はっきり言って残念作。スペイン映画らしいクセの強さもない。
俯瞰のPOVなんで誰目線?ってなるし、見にくいだけ。展開も黒幕もオチもすべてが中途半端。テンプレでも似た題材だと『ザ・ハント』みたいに寄せれたら化けれたはず。純粋にハズレ作品でしたね。
■ トロール・ハンター(2010・ノルウェー)
監督:アンドレ・ウーヴレダル
【あらすじ(ネタバレなし)】
学生たちは熊の密猟を追うドキュメンタリー撮影の中で、不審な男ハンスの存在に目を付ける。
彼を尾行するうちに、彼らは森の奥で信じがたい光景を目撃することになる。
ハンスは実は政府に雇われ、トロールの存在を隠しながら管理している専門家だった。
学生たちは彼の活動に同行し、巨大なトロールが現実に存在する世界を知っていく。
山や森、送電線、家畜被害など、日常的な風景の中にファンタジーが自然に入り込んでいく。
撮影が進むほど、トロールの生態や政府の隠蔽体制も少しずつ明らかになる。
民間伝承と現代的なモキュメンタリー形式を組み合わせた、異色のファンタジー・ホラー。
▶感想:
めちゃくちゃ面白いんです、これ!モキュメンタリーとしてかなり完成度が高い作品。
これは、POVでも『REC』とか『ブレアウィッチ・プロジェクト』みたいな、パニックに寄せてるんでなくて、トロールが本当にいた!そしてハンターがいた!ハンターに密着してみた!っていうモキュメンタリーで、あるはずのないことを本物のように、現実の風景にファンタジーを混ぜる見せ方がとにかく上手いです。
映画のようなファンタジーの派手さはない、ハンターも普通の人間でアクション映画みたいなヒーローではない、仕事は泥臭く、ブラックで、疲れ果てて、愚痴もいう、そういう現場のリアリティーがある。坂元監督の作品の中で『トロール・ハンター』がネタとして出てくるんですけど、坂元監督作品が好きな方には是非オススメ。似てます!坂元監督はこの作品大好きだったんだなぁってよくわかります。
たくさんの、後の同系統作品にも影響を与えた名作です。
■ ダイアリー・オブ・ザ・デッド(2007・アメリカ)
監督:ジョージ・A・ロメロ
【あらすじ(ネタバレなし)】
映画学校の学生たちは、森でホラー映画の撮影を行っていた。
しかし撮影中、各地で死人が蘇り人々を襲っているというニュースが飛び込んでくる。
最初は半信半疑だった彼らも、帰宅する途中で異常事態が現実であることを知る。
学生たちはカメラを回し続けながら、安全な場所を求めて移動を始める。
混乱する社会では情報が錯綜し、人間同士の不信も広がっていく。
記録することの意味と、生き残ることの意味が並行して描かれていく。
POV(主観映像)形式で描かれる、ロメロ流ゾンビホラー。
▶感想:
ロメロらしい社会風刺は健在。ただ、メッセージ性が少し前に出すぎているんですよね。ネットや情報化社会はこれから気をつけないとヤバくぞ!っていう警鐘みたいな振り方の作品です。
ロメロ好きの中でもかなり好みはわれると思います。ゾンビ映画というよりは、とにかくメッセージ性なので。それに、そんなに重くないんですよ、そのメッセージが。重くないことを重く話してる感。完全なPOVでなくPOV風というのは作品としては面白い試みとは思いますけどね。
この作品は単体でというより、この作品の考察をするとすごく拡がるので、そういう意味では私は好きです。
■ キック・アス(2010・イギリス/アメリカ)
監督:マシュー・ヴォーン
【あらすじ(ネタバレなし)】
平凡な高校生デイヴは、「誰もヒーローになろうとしないのはなぜだろう」と考え、自らヒーロー活動を始める。
特別な能力も格闘経験もないまま街へ出た彼は、思い描いていたヒーローとは違う現実を知ることになる。
しかし、その行動がネット上で話題となり、思いもよらない形で有名人になってしまう。
やがて彼は、本物の自警団ヒット・ガールとビッグ・ダディ、そして裏社会の人々とも関わるようになる。
正義感だけでは解決できない現実の中で、それぞれの思惑が交錯していく。
コミックヒーローの世界を現実寄りの視点で描いた異色の作品。
アクションとブラックユーモアが融合したヒーロー映画。
▶感想:
はい、これもまためちゃくちゃ面白くて大好き!
ヒーロー映画だけど、かなり現実寄り。その現実寄りなところが持ち味。超人はいない、超能力もない、スーパーSFガジェットもない、そんなロマンはない。けど、主人公はそーゆーのに憧れてて、ひょんなことで社会の裏側にほんとに本物がいた、でも思ってたヒーローと違う、生々しくリアルでファンタジーからほど遠い。ん?どこかで似たようこと言ってましたね、そう『トロール・ハンター』。こういう部分は似てるんですよね。また、アクションです。これもかなり現実寄りで、カメラワークもカットを割りすぎず、なるべくちゃんとどんなアクションしてるか見せる撮り方で、ここも坂元監督にきっと影響与えたのかなって感じますね。国岡シリーズで『キック・アス』、『ヒットガール』はネタででてくるし。
それにしても、ヒットガール役のクロエちゃん。顔が変わらない。
■ キャリー(2013・アメリカ)
監督:キンバリー・ピアース
【あらすじ(ネタバレなし)】
内気な高校生キャリーは、狂信的な母親のもとで厳しく育てられ、学校でもいじめの対象になっていた。
友人も少なく、孤独な日々を送る彼女だったが、ある日、自分の中に不思議な力が眠っていることに気付く。
その力は感情の高まりとともに少しずつ制御できるようになっていく。
一方で学校では、プロムを巡るある計画が密かに進められていた。
善意と悪意が入り混じる中で、キャリーは人生で初めて希望を抱こうとする。
しかし、その希望は思いもよらない形で打ち砕かれてしまう。
いじめと孤独をテーマにした、スティーヴン・キング原作の名作ホラーのリメイク。
▶感想:
『キック・アス』でクロエちゃん見たから、もっと年齢成長したクロエちゃん見たくて久々に見てみたリメイク版。
映像自体は現代的で見やすい作品。で、単体映画としては十分楽しめる出来。「キャリーってどんなストーリーなの?」という大筋はきっちり出せてるので、知らなかった人には見やすいと思います。
けど、
本家ファンからすると、かなり、厳しい。スティーブン・キングの魅力である人間の描写、家庭、学校、社会、すべてからの抑圧、じめじめした陰鬱さ、からの爆発、という文脈が弱すぎて、オリジナル版と比べるとリメイクとしては違う感はあります。
そしてクロエちゃんはやっぱり顔が変わらない。悪魔の棲む家→キック・アス、モールス→キャリーリメイク版、顔だけ据え置きでボディだけ成長。『エスター』をもし作り直しするならクロエちゃん抜擢しよう!って思うくらいには幼いまま。
■ 八仙飯店之人肉饅頭(1993・香港)
監督:ハーマン・ヤウ
【あらすじ(ネタバレなし)】
マカオで実際に起きた猟奇事件をモチーフにした香港映画。
ある食堂の店主が行方不明となり、その後を追う警察は不審な男に目を付ける。
取り調べが進むにつれ、事件の裏には常識では考えにくい凄惨な出来事が隠されていることが分かってくる。
物語は現在の捜査と過去の出来事を行き来しながら進行する。
犯人がどのような経緯で事件に至ったのかも少しずつ描かれていく。
猟奇性だけでなく、人間の欲望や暴力性そのものが前面に押し出された内容になっている。
香港映画史でも強烈な印象を残した、実録犯罪ホラー。
▶感想:
プログラムポリシーに抵触しそうな、そうでなくてもあんまり語るのは読む人を不快にさせそう、なくらいには『ヤバい』といわれる作品、なので控えめにします。
ショッキングな内容で有名な作品ですが、タイトルやゴアのインパクトは実は見てみるとそう強くはないです。古い作品ですしね、現代のほうがゴアはヤバいですし、もっと凶悪な犯罪のお話もたくさんあります。この作品はそんなタイトルやゴア、それだけではなくて、しいていうなら『胸糞悪い』を全側面から詰め込んだ闇鍋です。不快感や胸糞悪いに意図的に極振りした作品で、そういう意味では成功してる作品ですね。
また、当時の香港社会の空気や実録犯罪映画としての側面も強く感じられます。それだけでなく、この映画が日本で有名になった当時、日本はどんな社会だったのかな?なんでこの作品は有名になったのかな?振り返るとすごく日本社会も考えさせられます。
かなり重い作品ですが、映画史的にも印象に残る一本でした。
●6月まとめ
今月は、ホラーという枠に収まらない作品が多かった印象です。
『パージ』シリーズでは社会制度そのものをテーマにしたディストピアスリラー、『トロール・ハンター』ではモキュメンタリーとファンタジー、『キック・アス』ではヒーロー映画を現実的な視点から描くなど、それぞれ異なる切り口の作品を楽しめました。
一方で、『オールド』『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』『キャリー』『八仙飯店之人肉饅頭』のように、人間そのものや社会の歪みを描いた作品も多く、単純な恐怖だけでは終わらないテーマ性の強さも印象に残ります。
全体としては、娯楽作品を楽しみながらも、社会風刺や人間ドラマについて考えさせられる作品が多く、映画そのものをじっくり味わえた一か月だったように感じました。
考察する余地の大きい作品は、ホラーに限らずやっぱり面白いですね、これが映画の醍醐味。
本記事は鑑賞記録としての内容に限定しています。
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