地味に煩わしい、食べると身体が熱くなる『食事誘発性熱産生』とは?

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地味に煩わしい、食べると身体が熱くなる『食事誘発性熱産生』とは?

なかなか終わらない夏。残暑が続いておりますが、この機に一気に暑さの不思議ネタを出しきろうと思います。

今回は食事をしたあと身体が熱くなる現象、『食事誘発性熱産生』とその仕組みについてです。誰もが食後は熱くなりますが、この夏場は堪えますよね、特に頭や背中が熱くて汗が吹き出てびっしょりになったり。
これなんでなんだろう?という疑問。ちょっと難しいのであまり自信はありませんが、がんばってお話していきたいと思います。

 

食後に身体が熱くなる現象、『食事誘発性熱産生』

まず、食事をしたあとに身体にが熱くなる現象は、『食事誘発性熱産生 (DIT)』といいます。

食事をした後、栄養素が分解され、その一部は体熱として消費されます(食後の代謝増加)。

※『代謝』とは、生体内で生じる全ての化学変化とエネルギー変換のことをいい、各種栄養素が合成・分解される過程を指すします。

そして代謝のうち、食物を食べ、消化・吸収によって栄養素を取り込み、その栄養素から身体に合う材料を合成したり、身体を動かすためのエネルギーに変換したりする化学変化を、『エネルギー代謝』といいます。

エネルギー代謝が行われる際には、エネルギーを消費して、熱エネルギー(体熱)が産生されています。

食事誘発性熱産生は、栄養素を分解するために不可避的にエネルギーを消費するため、この代謝をするときに熱が発生するという現象です。

 

そうした仕組みで熱が生産されるため、安静にしてても(寝てても)、代謝量が増え、体熱が発生し熱く(暑く)なります。

この食事によって体熱生産に栄養が消費される作用を『特異動的作用』といい、現象としては『食事誘発性熱産生』といいます。

ん?名前が2つ?どゆこと?ってなりますよね。

「食後は、特異動的作用によって栄養を分解するときに熱が発生するのね」

「この現象のことを食事誘発性熱生産っていうの」

ということです。

アレルギー反応でたとえると、

「アレルゲンが身体に入ると過剰防衛反応が起こるのね」

「この反応のことをアレルギー反応っていうの」

っていう、こんな感じの口頭文言にしてみたらイメージできますかね。

正直、私はこの2つの用語の正確な使い方や使い分けを理解しきれていません。
なので単にご飯食べたら熱くなることを『食事誘発性熱産生』といい、その仕組みは?と聞かれたら『特異動的作用』といい説明したりしてます。多分、それで合ってるかな??

まぁ、専門家ではないので用語を覚える必要はありません。

「ご飯食べると身体が熱くなるのは自然なことで、ご飯をエネルギーにしてる証拠だよー」

って理解で大丈夫です。

 

栄養素による消費エネルギー量の違い

この作用で消費されるエネルギー量は摂取した栄養素の種類によって変わります。

たとえば、糖質オンリーで摂取した場合はおよそ6%。たんぱく質オンリーで摂取した場合はおよそ30%。脂質オンリーで摂取した場合はおよそ6%

たんぱく質の割合が圧倒的に大きいですね。たんぱく質は分解するためにたくさんのエネルギーを使うからです(後述します)。

通常の食事ですと糖質もたんぱく質も脂質も含まれてる混合食なので、およそ10%くらいが熱生産に消費されていると考えられています。

ちなみに、1日のエネルギー消費量の割合は、基礎代謝60%、身体活動30%、食事誘発性熱産生10%です。
実に1割は食事から栄養素を吸収するためにエネルギーが使われている、ということです。
そう、食べるだけで無償でエネルギーは手に入らない。大きなエネルギーを得るためには少しばかりのエネルギーを先に支払わないといけないんです。

衰弱すると食欲がなくなりますよね?
食欲がなくなる理由は他にもありますが、このエネルギー代謝するためのエネルギーのストックが不足しているから、というのも要因の1つです。

 

食事のあと体温はどれくらい上がる?

食事の後は特異動的作用により代謝がよくなりますが、具体的に『何度体温が上がるか』は個人差が大きく、また同じ人でも体調によって大きく異なります。

ですが、『朝食をしっかりとって体温をあげよう!』なんてよく見聞きしますよね?

これにはちゃんとした理由があります。

朝はまだ睡眠時からそのままの休息モード状態のため、体温が低い状態にあります。そこで朝食をとることで特異動的作用によって体温が上昇するのです。

朝食をとることによって上昇する体温はおよそ0.3℃と言われています。

たった0,3℃、しかし起床時36,1℃だったら、36,4℃になるわけですね。

こうしてみると結構温かくなっているのがわかりますね。

そのため、朝食をとらないでいると体温はなかなか上がらず、ボーッとしてしまう、眠気が抜けない、血圧が上がらない、など、『朝がだるい』状態が続いてしまいます。現代人あるあるですね。

朝食をとることは休息モードから活動モードへ身体を切り替えるスイッチになっているわけです。

また、筋肉量が多い方は特異動的作用が高くなる傾向にあります。

食事の内容では、流動や柔らかい食事よりも、しっかりと噛んで食べる食事の方が特異的動作用は高い傾向にあります。

これはよく噛むということも運動ですから、体温上昇に一役買ってくれているわけですね。

つまり、その一点だけで見れば、スープよりパン、パンよりご飯ということになりますね。

 

朝食抜きにすると体温はどうなる?

昼間は活動モードになっているため、朝食を食べていなくても動いていればなんだかんだで体温は上昇しますが、これは朝エネルギー補給をせずに、身支度、出勤(登校)などで身体を動かして体温をあげているため、疲れます。つまり【消耗】です。

疲労感が朝から昼まで続く理由はこうしたところもあります。

そしてその活動のためにエネルギーを消費したため、身体は実はかなりの飢餓状態で、エネルギー不足。そのため、体温をキープすることができなくなります。

温かい季節はあまり実感ないかもしれませんが、冬場ずぅーっと寒いのは朝食抜きが原因の1つでもあります。
※それだけとは決して限りません

こうしたことから、朝食をとることにより、初動の活動のエネルギーが確保でき、しっかりと供給されることで体温が上昇・維持ができ、1日の活動の効率もよくなることがわかりますね。

朝のだるさ、一日通して抜けない倦怠感、溜まっていく疲労感、こうした症状の原因には、ストレス社会だけでなく朝食抜きも要因の1つです。

とりわけ、脳はよく見聞きする通り、糖(グルコース)でしか働いてくれません。朝をシャッキリさせるためにも朝食が必要な理由がわかりますね。

 

ただ食べればイイわけではない、バランスよく食べる

体温を上げるために必要な筋肉を作ったり、代謝をしたりするためには多種多様なメカニズムがあり(難しくて代謝のすべてを説明することはできません)、そのためには様々な栄養素、つまり『各種栄養素の適正量摂取』が必要です。

また、『パン』だけ、『麺類』だけ、など食べやすいもの『ばっかり食べ』の食事は、形態が柔らかい食事になることが多く、噛む回数も少なくなってしまい、特異動的作用が低くなってしまうこともあります。

体温を上昇させるシステム、特異動的作用は、代謝したりするだけでなく筋肉などの生産・構築のためにも熱を生産しています。

難しいので、とにかくざっくり、『エネルギーが使われるとき熱が発生する』と思っていてOKと思います。

 

たんぱく質が体温上昇に効率イイ理由

たんぱく質は、アミノ酸が結合したペプチドが層になる複雑な構造をした高分子化合物です(ペプチド結合)。そのため、たんぱく質は他の栄養素よりも消化・吸収するために使用されるエネルギー量が多くなります。

これがたんぱく質が特異動的作用が高くなる理由ですね。

ようするにとても大きなものを小さいものに分解するには、たくさんの労力(エネルギー)が必要ということです。

体温上昇には効率イイけど、それだけのエネルギーを使うのだという角度でみれば燃費悪いともいえますね・・・。

よく、プロテインとかたんぱく質やアミノ酸系のサプリメントでメラメラと燃えるパッケージになってたりしますよね。

筋肉は熱を産生し体温を維持したり、脂肪燃焼に関わっていたり、また筋肉を作る際にも熱を産生したり、非常に多くの代謝に関わっているため、その高い体熱産生の効率からそうしたイメージ画になってるのかなと思ってます。

 

食事誘発性熱産生って、身体にイイことなの?

ここまでで少し疑問に思ったら方もいるかもしれません。

それは、消費する、消費する言うから、まるで悪い意味で消耗してるみたいな。

「というか、え?消化・吸収するためにそもそもエネルギー使っちゃってるの?」

と思った方もいるかもしれません。

はい、そうなんです。これは私の解釈ですが、エネルギーとは『1歩下がって3歩進むもの』と思ってます。

冒頭で、「ご飯食べると身体が熱くなるのは自然なことで、ご飯をエネルギーにしてる証拠だよー」と言いましたが、

ご飯をエネルギーにするために、まず最初にエネルギーを使うからマイナス1歩。でも食べて消化・吸収されることで栄養が充足されるからプラス3歩。つまり計2歩の前進。

しかし、日常の活動強度が低くエネルギーの消費が少なければ、食事のたびにプラス2が重なり、体重が増加、肥満になってしまいます。

逆に活動強度が高く、補給量を超えてエネルギーの消費が激しければ、結果としてマイナス、それが続けば体重減少になります。

私たちIBDはとくに病態が悪く弱りきっているときには、食べれなくなりますよね。IBDだけではありません、風邪でもインフルエンザでも肺炎でもガンでも、身体が弱りきっていたら食べる元気さもない。

というのは食べれるだけのエネルギーさえ残っていないからですね。

そんなコンディションですと体温の維持もできず、全身の活動も弱まり、明らかに病人めいてきます。

ですから、暑い夏でも激しい運動のあとでも食べれる身体って、とっても健康的で丈夫なんだということがわかりますね。

最初にエネルギーを使っちゃうというのはなんだか損をしているような気がしますが、こればかりはヒトの身体の仕組みなので仕方ありません。

それよりも食欲がないときというのは、言われるまてまもありませんが弱っている証拠となりますので、サインと思って、経腸栄養価剤や栄養食を頼って栄養を摂ってくださいね。

 

まとめ

ご飯を食べると『特異動的作用』というものによって体温が上昇すること、代謝が行われると熱が産生されること、そしてこれが生命活動にとってとても重要なことがわかったかと思います。

「いや、暑くなる理由はわかったけど、そもそも暑いのが嫌なんだが!?」

と思った方も多いでしょう。

諦めましょう……。

私も暑いの嫌なんですけどね、この現象を抑止して身体に良いことなんて1つもありませんので、こればっかりは健康であるためにも受け入れるしかありませんね。

夏場はしんどいですけど・・・きくらげは背中にアイスノンを当てたりしてます。前回お話しましたがこれはこれで注意が必要。

そんなこんなで、ちょっとふわっとした説明でしたが食事誘発性熱産性の仕組みでした。

 

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