『IBDとサプリメントの必要性』
サプリメントに関しましては健常者も含めて賛否両論ありますよね。『そんなものに頼らずに食事から摂取すべきだ』、そういう考えの方もきっと少なくはないでしょう。
私自身、現役を退いているとはいえ栄養士ですから、思うことは様々あります。しかし賛成も反対もどちらにも是非を言うつもりはありません。
サプリメントとはもともと『補足』や「『追加』といった意味があります。あくまでも薬ではなく栄養素を補うためのものです。
また、薬機法により、原則的に疾病の診断、予防、治療を目的としていません。
そのため、サプリメントを取り入れることは個人の目的と状況によりけり、と私は考えます。
今回はそんなサプリメントについて、その必要性や注意すべき点などお話していきたいと思います。
必要性について
まずは必要性について、一般的な認知に触れていきます。
この場合の必要性とは、人による『角度』によって変わります。いくつか例に挙げてみましょう。
①医療における『治療』という角度
血液検査で欠乏症がみられないのであれば、異常はない。治療の必要性は皆無です。ですから当然、サプリメントの必要性はありません。
私たちIBDであっても、血液検査で欠乏症がなければ、こちらからお願いしてもサプリメントの処方はしてくれません。
そもそも、病院で処方してくれる『栄養を補うモノ』は全て『サプリメント(健康食品)』ではなく治療・改善を目的とした『医薬品』です。
※ココ、絶対に間違いないように⚠️
ですので欠乏症がみられれば、すぐに処方をしてくれます。
これが『治療』の角度ですね。
②スポーツマンなど『身体強化』という角度
あくまで一般的な認知としてですが、前提として血液検査における欠乏症はみられない状態で、かつ、より身体機能、とりわけ運動機能を増強したい場合にサプリメントを服用している方が多いですよね。
強い運動負荷に加えてプロテインであったり、亜鉛であったり、各種ビタミンやミネラル群を摂取することにより、より身体機能の増強を試みています。
これは目標としている状態が単に健康体という状態ではありませんから、求めるのであれば強化するためには食事だけでなくより効率的で効果的なサプリメントの服用の必要性は生じますよね。
しかし、間違えてはいけないのは、サプリメントは健康食品であり、それ単体で身体が変化するという効果と保障は絶対的にありません。
サプリメントによって身体を強化したい栄養素を効率良く補いつつ、適切な食事と睡眠と運動のバランスによって目標を達成するのだ、という鉄則をお忘れなく。
③『健康体を保持増進』という角度
これもあくまでも一般的な認知としてですが、②のスポーツマンの場合と似てて少し違います。運動機能の増強を目的としているわけではなく、あくまでも健康体であり続けるための、病気の予防や、日々の疲労の回復、身体の安定の為のサプリメントの服用している方も多くみられますよね。
勿論、欠乏症はないので治療の必要性もなく、運動機能を増強するほどの目的や必要性もありません。いわゆる『健康志向』の範疇と捉えられますね。なので保持増進のためのサプリメントの服用は、必要性は個人の考え方になると思います。
これも②と同じですが、サプリメントは健康食品であり、病気の予防や改善・疲労の回復や免疫力向上など医薬品のような効果を目的としていません。そのため、それ単体での効果・保障は絶対的にありません。
健康志向としてサプリメントを取り入れる場合も、適切な食事と睡眠と運動を1番に心掛け、日常のケアとしてあくまでも補う目的として服用するという鉄則をお忘れなく。
さて、このように、目的と状態と志向によって必要性とは変わりますので、一概にサプリメントの良い悪いは言えません。
IBDにとってのサプリメントの必要性
これはやはり1に欠乏症ですね。欠乏症があれば『絶対的必要』があります。
が、先にお話した通り欠乏症であれば医薬品として処方されますのでサプリメントではありませんね。
運動機能増強目的の方にも必要性はありますが、それ以前にまず私たちは健康状態の維持・保全を考えなければなりません。
寛解であり比較的制限のない食事がとれている場合、欠乏症にはなりにくいでしょう。
活動期であっても、エレンタールなどの成分栄養剤をきちんと摂取していれば、そう簡単に欠乏症にはなりません。
しかし、短腸であったり、活動期の中でもとくに悪い状態で発熱や下痢が続く場合などでは、食事や成分栄養剤だけでは賄いきれず、サプリメントの必要性が心的に生じる場合もあります。
※絶対的必要であれば処方されますので、サプリメントの意義は心的なもの、安心感を得る側面が大きいかもしれません。
いずれにしても、欠乏症に関しましては医療サイド、医師のほうできちんと診て管理してくれますので、必要に応じて処方されますから、『治療』という角度において自らサプリメントを購入する必要性はないかと思います。
そして、私たちが日頃強く思っていることは、先の③になりますよね。
体重を増やしたい、体力をつけたい、悪くなったときに戦えるだけの身体にしたい、寛解を維持し続けたい。
『保持増進』これが強い願いでしょう。
必要性は、求めるのであれば、当然『有ります』。
※②、③とまったく同様で、適切な食事と睡眠と運動を心掛けた上で、『補う』という鉄則は変わりません。
サプリメントを服用する前に、『過剰摂取』に注意
さて、口すっぱくサプリメントの絶対的な鉄則をお話しましたが、サプリメントで注意しなければならないのはそうした考え方や捉え方だけではありません。
サプリメントはただ闇雲に服用すればイイ、というわけではありません。中には過剰摂取によって引き起こされる『過剰症』という健康障害もあります。
そもそも、健康維持目的として補うためだとしても、欠乏症がない以上、既に栄養素は充足できている状態ですから、摂り方を誤ると簡単に過剰摂取になってしまいます。
気を付けなればならない栄養素は、ありていに『身体に蓄積されるもの』です。
ビタミンB群など水溶性のものは摂りすぎても身体には蓄積されず尿で外へ排出してくれます。
身体に蓄積されるものは、脂溶性ビタミンや一部のミネラルになります。
代表的な栄養素を挙げてみます。
●ビタミンA
ビタミンAは『目に良い』とは耳にしたことがあると思います。主な成分であるレチノールには、目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、抵抗力を強めたりする働きがあります。 また、レチノールは、視細胞での光刺激反応に関与するロドプシンという物資の合成に必要なため、薄暗いところで視力を保つ働きもあります。
過剰症としては頭痛が顕著で、急性の過剰症としては脳脊髄液圧の上昇、慢性的な過剰症としては、頭蓋内圧亢進症や皮膚のはげ落ち、口唇炎、脱毛症、食欲不振、筋肉痛などの症状が見られることが知られています。また妊娠中の過剰摂取は奇形児の原因になりますので特に注意が必要です。
※貧血予防としてレバーをたくさん食べた結果、レバーに多く含まれるビタミンAを過剰摂取してしまい奇形児が産まれてしまう症例があります。
●亜鉛
亜鉛は成長や発育に大変重要な栄養素であり、IBDなど成長期に吸収障害がある場合、発育障害になることもあります。
見た目にはわからなくとも見えない障害として性機能、とくに男性の場合『無精子症』になる場合もあります。
その他にも味覚や免疫力、肌や髪、抗酸化作用など、様々な効果がありますが、過剰摂取にはとくに注意が必要です。
過剰症として、頭痛・吐き気・下痢・食欲不振・神経障害・貧血・HDLコレステロール低下などの症状が現れます。また前立腺がんの発生リスクの上昇(約2倍)、さらに鉄や銅など必須ミネラルの吸収阻害があり、『銅欠乏』になることがあり、血液検査異常や神経症状を中心とした症状が出ることがあります。
亜鉛過剰症は、味覚にも顕れます。舌がピリピリするなどがサインになります。また欠乏症では味が薄く感じます。
●カルシウム&ビタミンD
骨粗鬆症『予防』として服用する方が多いと思いますが(サプリメントとしては予防効果はありません。真に効果があるのは病院で処方される医薬品の活性型ビタミンDです。栄養素としての効果とサプリメントとしての効果は別の話ですので注意)、過剰摂取しますと腎臓の働きが悪くなるといわれています。また血中のカルシウム濃度が高まると血管壁に溜まり血管が細くなってしまい、血管の詰まりや破れの原因にもなります。
骨粗鬆症を既に発症しており医師から処方されている場合、用法用量をきちんと守りましょう。独断でサプリメントを追加してはいけません。
●カフェイン
気付けのつもりでエナジードリンクなどを飲むことが多いと思いますが、コーヒーなどの茶類にも多く含まれていますね。過剰摂取では脈が早くなり動悸・息切れ、胃痛、吐き気などが現れます。酷ければ胃潰瘍にもなります。
IBDの場合、刺激が強いので注意が必要です。
●マグネシウム
マグネシウムはカルシウムやリンとともに骨を形成するほか、300種類以上の酵素反応、筋肉の収縮、神経情報の伝達、体温や血圧の調整にも関わっており、疲労回復やストレス緩和などの効果があります。
過剰分は尿中に排泄されるので通常の食事ではそうそう過剰症になることはありません。 しかし、腎機能が低下している場合やサプリメントの服用により高マグネシウム血症が生じやすくなり、下痢、軟便、腹痛、吐き気、血圧低下、心電図異常などの症状が現れます。
●酸化マグネシウム
主に便秘予防に服用することが多いでしょう。(サプリメントとしての予防効果はありません。お腹がスッキリしやすくなる程度です)
酸化マグネシウムには水分を吸収する働きがあり、浸透圧の働きによって腸内の水分量が増えると、その水分を酸化マグネシウムが吸収して腸内の水分量が増加します。
そのため便が柔らかくなり膨張するため腸内の動きが活性化されます。
IBDや直腸がんなどの術後の排便障害(便秘など)がある場合に、便通を良くするために処方されることがあります(医薬品)。医師と薬剤師の指示をしっかりと守りましょう。便秘が解消されむしろ下痢をするようになったら過剰症です。服用を中断して速やかに主治医に報告しましょう。
●カリウム
カリウムは、ナトリウムとともに、細胞の浸透圧を維持しているほか、酸・塩基平衡の維持、神経刺激の伝達、心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節などの働きをしています。
また、カリウムは腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して、尿中への排泄を促進するため、血圧を下げる効果があります。
しかし過剰症にも要注意です。腎機能が正常であり、サプリメントなどを使用していない場合では、通常の食事で過剰症になるリスクは低いと考えられていますが、サプリメントによって過剰摂取した場合、手指や唇のしびれ・全身がだるい・不整脈などの症状が現れ、心臓が止まってしまう原因にもなります。
カリウムを多く含む食品(果物・野菜・芋類・干し物等)や蛋白質の摂りすぎには特に注意が必要です。
●クレアチン
クレアチンは肉などの食物に含まれているアミノ酸の一種で、疲労回復や筋肉構築の助けになります。通常の食事量ではあまり問題はないと思われますが、筋肉増強目的としたサプリメントとして大量にクレアチンを服用すると、分解産物である『クレアチニン』(クレアチンと似てて非なるもの:名前注意)の血中濃度が増加します。クレアチニンとは、筋肉を動かすためにエネルギーを使った後に生じる老廃物で、クレアチンの代謝最終産物です。
このクレアチニンは体にとって不要な毒物で、本来は尿として体の外に出ていきますが、過多になりますと腎臓に溜まり、腎機能にダメージを与え、多尿やたんぱく尿になったりします。そのまま放置しますと、さらにクレアチニン濃度が高くなり腎臓病の原因にもなります。
ざっとですが過剰摂取にとくに注意が必要な栄養素はこのあたりでしょうか。
怖い副作用ばかりですよね。安直に闇雲に多く摂れば良いわけではないことがよくわかると思います。
どれくらいなら過剰症にならない?
ケースバイケース、なんともいえないです。
やはり日常の運動負荷や栄養状態、腸管の状態、様々な条件によって変わってきますので、『独断でサプリメントを服用することはあまり望ましいとはいえない』という見方が強くなることでしょう。
しかし、医師や栄養士は欠乏症にならなければ指導はしてくれません。教えてくれるのは病院外の栄養士やアドバイザーなどになりますよね。
これもまた、人によって見解が違いますので、ピンポイントで的確なことをいうにはとても難しいです。
適正量としては、当たり前のことですが記載されている『目安量(サプリメントは医薬品のように用法・用量が定められていません。目安量です)』を守ることが原則になりますね。
また医師にはサプリメントを服用していることを必ず伝える必要があります。それによって血液検査の見方も変わってきますので。
記載されている適正量を守っていても過剰症の気がみられた場合には減量あるいは中断をすること。
過剰症は確かに怖いですが、一発アウトということもないので、ある程度は自分の身体を使って手探りで自分に合う加減を見極める必要がありますね。
「いや!説明もやり方も粗い!」と思うかもしれませんが、
そもそも、今現在食事だけでどの程度摂取できているか、またどの程度補うべきか、それすらわかりませんよね?
◯◯mgとかいわれてもわかりませんし計算もできませんよね?
それができるのはやはりプロですから。素人が独断でサプリメントを服用する場合は手探りになってしまうのは仕方のないことです。
結局、サプリメントっているの?
「そーまでしてとりたくない」
こう感じる方も多いでしょう。それくらい慎重になっても良いと私は思います。安直に乱用するよりは飲まないほうがイイ。
結局のところ、欠乏症がなければ自己判断です。求めるか求めないか、ですね。
まとめ
ほとんど必要性と過剰症の話しかしてませんでしたが、栄養士である私でも、安易にオススメはできない、ということですね。
サプリメントのメリットばかりに目を向けず、また過剰症ばかりに目を向けず、正しい知識を吸収してください。
そして何よりサプリメントの正しい理解を。
『栄養素が持つ働き』=『そのままの効果がある』ということでは決してありません。医薬品ではないので効果を謳うことは薬機法上できず、効果を謳えないということは効果の保障もないということ。
体験談では、「コレは良かった、手応えあった」というお話はしばしば浮上していますが、薬機法上、お薬ではないのに「コレを摂取すれば治る!(治療)」、効果を謳うことはしてはいけないことなのです。
ですので「確実に効果がある!(断定)」なんてことは絶対に言ってはいけません。
直接的な効果などなく、あくまでも補うものだということを理解してください。
当サイトのようなブログでも、直接対面して、栄養アセスメントをするのなら別ですが、ブログのような多くの方が目にする場で、コレ!っていうオススメはできません。
取り入れる際には医師や薬剤師へ相談することが望ましいでしょう。最終的にはご自身の自己判断、自己責任ということをご理解ください。
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