IBDと鎮痛剤②リスクと正しい使い方

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『IBDと鎮痛剤②リスクと正しい使い方』

 

前回は鎮痛剤の種類を主にお話していきましたが、今回は鎮痛剤の危険性や欠点と、正しい使い方についてのお話です。

※医師でも薬剤師でもないので販売リンクは貼りません。

※こちらで紹介する商材はドラッグストアなどで購入できる市販品です。
購入にあたって、3類2類の医薬品は医薬品登録販売者、その他の1類や要指導医薬品は薬剤師の指導の元で購入が必要になります。
どれでもなんでも自己判断のみで購入できるわけではありません。

その理由がリスクがあるため、です。このあたりを解説いたします。

記事を読まれた方は1度お薬の注意書をご自身で確認し、必ず医師や薬剤師に相談し、指導の元、正しく使用してください。

 

鎮痛剤はお腹に悪い?

非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)も、非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)以外の鎮痛剤も、いずれもこれらの痛み止めは、炎症や痛みの原因を抑えるための消炎鎮痛剤としては非常に使いやすく効果のある薬ですが、用法・用量を守らなかったり、長期間服用していると胃や十二指腸だけでなく、小腸や大腸にも潰瘍などの消化管粘膜障害といった副作用が起こる恐れがあります。

 

『胃腸障害』

NSAIDsの副作用として比較的起こりやすいものに胃潰瘍や胃腸障害があります。

前回も触れましたが、プロスタグランジンには胃酸分泌の抑制や胃粘膜の保護などの働きもあるため、NSAIDsによりプロスタグランジン生産が抑えられると、血流を悪くし、胃酸分泌が増え、さらに胃粘膜の保護機能も低下するため、結果として胃粘膜が胃酸に犯され胃腸障害が起きてしまいます。

胃や十二指腸の粘膜病変だけでなく、小腸や大腸にも粘膜病変を引き起こすことも明らかになっています。NSAIDsの慢性的、習慣的な服用は潰瘍や消化管粘膜障害の重症化につながりやすく注意が必要です。IBDの場合、下血することもしばしばあります。

IBDの場合、デフォルトで消化器に炎症があります。極力鎮痛剤の服用を避けることが望ましいです。

 

『腎機能障害』

NSAIDsには炎症物質の生成を抑制する作用と同時に、血管を収縮させる作用もあるため、腎臓に流れ込む血液量が減少し腎臓の働きが低下する恐れがあります。

とくに動脈硬化が進んでいる高齢者の場合、腎臓の血流が少ない場合は、一気に腎臓の糸球体の血液量が減少し腎障害が進む恐れがあるので、十分な注意が必要です。

また、利尿薬アンジオテンシン変換酵素阻害薬アンジオテンシンII受容体拮抗薬といった血圧を下げる薬はプロスタグランジンの生合成を抑制する作用をもつため、NSAIDsと一緒に服用すると、腎機能障害が悪化する恐れがあります。

 

歯の痛みや頭痛、関節痛などがあるときに痛み止めを内服する方もおりますね。そうした場合でも、用法・用量を守らなかったり長期内服を続けていると胃潰瘍などの胃腸障害を引き起こし命に関わることもありますので、IBDでなくとも服用には注意点が必要です。

 

IBDはロキソニン飲んでもいい?

こうした質問はとても多くSNSで見聞きします。

OKかNGかでいえばOKです。主治医も処方してくれます。

しかし、【OK=問題なし】という直結した話ではありません。

あまりにも耐え難い痛みがある場合には、やむを得ず服用しても良いというだけで、健常者よりも腸管への影響は顕著ですし、むしろ悪化させてしまうことさえあります。

私自身も、まだIBDビギナーだった頃に耐え難い痛みにロキソニンを服用しましたが、下血しました。それ以降、二度と服用してません。

SNSで直に質問を受けた際には、

「ダメではないですけどお腹へのダメージが大きいので可能な限り服用しないほうが望ましいです」

とお答えしてますが、高確率で、

「でも、先生は飲んで良いって言ってましたよ!」

と返ってくることが多いです。

でしたらSNSで質問する意味ないですよね?先生がOKって言ったから飲んでます。ならどうして「飲んでOKかNGか」の質問をするのでしょうか?

それは【不安】だからですね。OKと言われて飲んでるものの、あまり効果はないし、痛みは変わらないし、SNSで調べてみると「鎮痛剤飲むのはよくない」ってコメントが多々見受けられる。

こうして不安になって質問するのかと思います。

正直、医師の診断と処方に素人が異を唱えるのは望ましくありません。医師の指導の上であればあとはご本人の判断です。

しかし、質問されれば正直に答えますね。

医「あんまり痛み酷かったらロキソ処方するけど、飲んでもいいよ」
私「でもお腹へのダメージ大きいですよね?」
医「まぁそりゃね。できれば飲まないほうがいいけど、でも痛すぎて日常生活に支障あるなら仕方ないよ
私「いえ、気合いで耐えます」

これが私と主治医のやり取り。

これはまくまでも私の主治医の見解にすぎませんが、お薬の成分的にお腹へのリスクがあることは紛れもない事実ですので、可能な限りは服用しないほうが望ましいこともまた確かです。

健常者でさえ、生理痛でロキソニンを服用したら腸管が破れたという重症ケースの報告があります。

市販薬であってもきちんと薬剤師の指導の元、安易に服用はしないようにしましょう。

 

NSAIDsは神経痛には効果が低い

NSAIDsは炎症を抑えることで解熱・鎮痛効果を発揮するため、炎症がない神経痛等にはあまり効果的ではありません。また、即効性もありませんので服用しても痛みが引きにくいです。

神経痛の特徴は、歯や首や腰など、ビリっ!、チクっ!、ツーン!と、電気が走るような鋭い痛みが特徴です。 神経痛に効果が期待できる内服薬は、『リリカ』、『タリージェ』といった、一般の方には聞きなれない種類のお薬になりますが、これらは市販品はありません。

神経痛の場合はカロナールのほうが効果が期待できます。市販品ではアセトアミノフェンとイブプロフェンを組み合わせた『バファリンDX』、『イヴA』などが良いでしょう。

バファリンDX、イヴAの商品パッケージ画像

 

どんなときに鎮痛剤を使うのが正しい?

鎮痛剤は痛みがあったらすぐ飲んでイイ、というわけでもありません。市販薬もたくさんあり、手軽に入手できることから安易に服用している方も多いかと思いますが、そもそも鎮痛剤には原因を治す効果はありませんし、症状に合わせた頓服としての使い方が正しいので、『なんだかわからないけどとりあえず飲む』というものではありません。

とくに、原因がよくわからない状態で鎮痛剤を服用することは望ましくありません。胃腸に炎症がある場合はロキソプロフェンのように強力な鎮痛剤はさらに症状を悪化させてしまいます。

原因がはっきりわからない痛みで、どうしても我慢ができない場合は、最も『悪影響の少ないアセトアミノフェン』が望ましいです。

症状に合わせて相性の良い鎮痛薬を飲みましょう。

とくに、市販品の場合には重々注意、連続して服用しないこと。

IBDの方の場合は、外来時にきちんと主治医と相談して適切な処方をしてもらうことが最も望ましく最もリスクが少ないです。

当たり前のことかもしれませんが、手軽な市販品は処方薬を切らしてしまったときの緊急用くらいに思っておいたほうが望ましいです。

 

腹痛の原因別・市販薬

先にお話した通り、痛ければなに飲んでも良いわけではありません。

前提として最も望ましいのは当然、病院にいって医師による適切な診断と処方です。

お仕事ですとか休日であったり、病院にいけない場合に市販薬を対処療法として一時的に短期服用するものです。

その上で鎮痛剤の選び方のお話ですが、自分なりに原因がわかっている場合は、痛みを抑制する鎮痛剤を服用するよりも原因そのものに作用するお薬を服用するほうが望ましいです。

 

食べ過ぎによる胃の痛み、胃もたれ、ムカつき

鎮痛剤を使わず、『ガスター10』など『ファモチジン系』で過度な胃酸の分泌を抑制する、『スクラート胃腸薬』などで胃粘膜を保護する、『ビオフェルミン(整腸剤)』などで腸内環境を整える。などで原因にアプローチするのが望ましいでしょう。

ガスター10、スクラート胃腸薬の商品パッケージ画像

 

便秘

こちらも鎮痛剤は使わず『酸化マグネシウム』で便を柔らかくする、『ビオフェルミン(整腸剤)』などで腸内環境を整えるなど、原因にアプローチするのが望ましいでしょう。

新ビオフェルミンS錠、酸化マグネシウムE便秘薬の商品パッケージ画像

 

生理痛

月のものは原因をどーにかできるものでありませんので、酷ければ鎮痛剤を無理をせずに使いましょう。ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、どれでも効果はありますが胃腸に痛みを伴う場合は、比較的悪影響の少ないアセトアミノフェンやイブプロフェン、ロキソプロフェンを服用する場合は胃粘膜を保護するスクラート胃腸薬などを併用しましょう。

 

食あたり・お腹の風邪などによる下痢を伴う腹痛

この場合、悪い細菌などを排泄する必要があるので下痢止め薬は厳禁です。

それよりも水分をきっちり補給することとビオフェルミンなどの整腸剤で腸内環境を整えることが大切です。

鎮痛剤はなるべく使わないほうが望ましいですが、服用する場合は胃腸への悪影響が少ないアセトアミノフェンがよいでしょう。

 

その他、怪我等に効く鎮痛剤

捻挫など炎症を伴う痛み

湿布薬としてはロキソニン、フェイタス、ボルタレンなどが炎症を抑えてくれるので効果的です。

内服薬としては『ロキソニンS(ロキソプロフェンが炎症を抑え痛みを緩和します)』、『ラックル(アセトアミノフェンが素早く作用して痛みを緩和します)』、『フェリア(イブプロフェンが早く作用して痛みを緩和します)』など。

ロキソニンS、ラックル、フェリアの商品パッケージ画像

 

裂傷や火傷などの痛み

裂傷や火傷などの怪我は治癒目的のお薬と感染症予防のお薬が必要になりますが、今回は鎮痛剤のほうだけ紹介。

メモA』軟膏。これは他とはちょっと成分が違います。局所麻酔薬のジブカイン塩酸塩』が、痛みを緩和します。同時に殺菌成分が化膿を防ぎ、酸化亜鉛が傷口を保護し、ビタミンEは血行を良くし、さらにアラントインが新しい皮膚の再生をサポートします。複数の有効成分が、バランスよくやけどの治癒を促してくれます。

メモAの商品パッケージ画像

 

その他には『バファリンEX』などロキソプロフェンで炎症を抑え痛みを緩和します。

バファリンEXの商品パッケージ画像

 

まとめ

鎮痛剤には、成分も様々あり、また単一の成分だけでなく他の成分と組み合わせた商品が多く、『どんな痛みにどの鎮痛剤が向いているか』がなかなかわかりにくく、また覚えにくいと思います。

メジャーな『バファリン』1つとっても、アセトアミノフェン、アセトアミノフェン+イブプロフェン、ロキソプロフェンなど配合によって商品もルナ、DX、EXとか末語に付いてるだけなので、区別がしにくいですよね。

また、IBDにとっては腹痛は切っても切れない宿命ですが、それでも鎮痛剤の服用がお腹に悪い影響を与えてしまうことがわかったと思います。

 

鎮痛剤を服用する場合は、乱用は厳禁、なるべく我慢し、どうしても耐えられない場合のみ、悪影響の少ないアセトアミノフェンの鎮痛剤にすることと、それでも効果がなく、あまりにも痛みが強い場合にはロキソプロフェンと+胃の粘膜を保護する薬や整腸剤などを併用してなるべくダメージを軽減させるようにしましょう。

また、市販薬は、誤った使い方や効果のない使い方を防止するために、いくつか商品名を覚えておくことが望ましいです。

覚えやすいのは、【怪我で炎症がある痛みにはロキソプロフェンの仲間】、【歯痛などの神経痛にはイブプロフェン】、【風邪などの発熱や頭痛にはアセトアミノフェン】、と覚えるのが良いかと思います。

たとえば怪我には『ロキソニンS』、頭痛・生理痛・神経痛には『イヴA』、風邪には『バファリンルナ』と、ざっくりでも区別して、3種の鎮痛剤だけ覚えておけば困らないかと思います。

3商品、自分に合う解熱鎮痛剤を選んでおきましょう。

そして最後にもう一度。

医師による適切な診断と処方】、これが最も望ましく、市販薬はあくまでも対処療法、一時的な頓服としての服用という範囲で使用すること。これを忘れないでください。

 

以上、二回に分けて鎮痛剤のお話をしてきましたが、基本は医師や薬剤師と相談です。これは大前提であることを忘れないでください。

市販薬を飲む場合も、薬剤師の説明をしっかりと受けてから服用しましょう。

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