クローン病の外科的療法・手術の種類と方法-③シートン留置術と人工肛門増設術

クローン病の外科的療法・手術の種類と方法③シートン留置術と人工肛門増設術について解説します。 クローン病
クローン病外科治療
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今回は、肛門部病変に対する手術『シートン留置術』と、必要に応じた『人工肛門増設術』について解説します。

※今回、覚えること多いです。

 

肛門部病変について

肛門部病変に対する手術の種類と方法の前に、まずは肛門部病変について詳しくお話します。

肛門部病変のでき方には二通りあり、

1つ目は、一次病変:クローン病の病変が肛門に発生した『裂肛(れっこう:切れ痔)がこれにあたります。慢性化し深くなったものは肛門潰瘍といわれます。

クローン病に特徴的な腸管病変に縦走潰瘍という縦方向に長い潰瘍でありますが、これが肛門に発生したものです。

クローン病の裂肛、肛門潰瘍は深く幅広く、周囲の腫れが強い、多発しやすいといった特徴があります。排便時の出血や痛みが主な症状です。

2つ目は二次病変:クローン病の一次病変が原因となって二次的に発生したもの

一次病変である裂肛や肛門潰瘍が原因となって続発したもので、代表的なものに『肛門周囲膿瘍と『痔瘻があります。

深い肛門潰瘍から菌が侵入して、周囲に膿がたまって腫れてきたものが『肛門周囲膿瘍』です。強い痛みや発熱を伴うようになると切開する必要がありますが、切開した後に肛門内の潰瘍病変から皮膚切開部までトンネル状の瘻管がつながった状態になったものが『痔瘻です。

切開を受けることなく自然と穴が開いて(自潰といいます)出来る場合もあります。

痔瘻が出来ると痛みや発熱、排膿といった症状を繰り返すようになります。

また、裂肛や肛門潰瘍の周囲の肛門皮膚が腫れて膨らんでくることがあり、『皮垂と言われています。クローン病の皮垂はむくみや腫れが強く、多発するという特徴があります。

肛門潰瘍や痔瘻の炎症が長期に持続すると肛門が狭くなることがあり、『肛門狭』と言われます。まれに癌が合併することがあります。

また痔瘻は主に肛門と隣接して背中側(肛門と尾てい骨の間らへん)にできることが多いですが、女性の場合深い痔瘻が膣とつながることがあり、『肛門膣瘻』あるいは『直腸膣瘻』と言われます。

 

これらは肛門部秒は腸管と違い腹膜炎や腸閉塞のリスクはありませんが、寝ても座っても立っても痛い、常に膿がでる、排便のたびに激痛と出血と膿という、QOLが著しく低いのが問題で、相対的手術の適応になります。

 

※私も最初の手術をしたときには結構大きな痔瘻がありました。肛門と隣り合って後ろ側(背中側)に大きな腫れがあり、排便痛だけでなく寝ても座っても立っても猛烈に痛かったです。円座クッション持ち歩いてましたね。

確定診断されてからの長期絶食のおかげで自然と小さくなりましたが、自壊してもおかしくない大きさでした。

肛門鏡も入らないほど肛門も狭くなり、初めての内視鏡ではスコープが入らず激痛を伴い、急遽麻酔で意識を落としての検査となりました。

幸いなことに肛門部病変の手術はしないで済みましたが、肛門部病変の痛さ、辛さ、恥ずかしさ、QOLの低さは本当に痛感です。

 

手術の種類と方法①シートン留置術(シートン法)

痔瘻では内部に膿がたまって腫れや痛みを繰り返すことが多く、破裂してはまた塞がり膿が溜まるということの繰り返しになりますので、膿を排出しやすくする目的でシートン留置術を行います。

腫れ上がった膿瘍を切開し開放し、痔瘻の瘻管に糸やゴムなどを通して両端を結んでリング状にします。

※ちなみにシートンとは「ひも」という意味です。

こうしたシートンを長期的に留置することで傷口を塞がずに膿を溜め込むことなく外に排出できるようにし、内科的治療を行って炎症を下げ、肛門潰瘍や痔瘻の治癒を期待する方法です。

お尻に異物感があり、ちょろちょろと膿は出ますし排便の痛みも変わらずありますが、シートン法を用いる以前の状態よりもずっとずっとマシになります。シートン法だけでもQOLは向上しますが、最終目標はシートンを取り出して瘻孔を治癒させることです。長期戦になりますが頑張りましょう。

シートン法のイメージイラスト(手書き)↓

クローン病の痔瘻に対する治療・シートン留置術の手書きイラスト

※私の同病者仲間にもシートン留置してる方はいますが、生理用ナプキンなどを下着に着けてちょろちょろ出る膿対策をしていました。勿論、円座クッションも手放せず。

マシになるとはいえ、様々な工夫が必要になりますね。

手術の種類と方法②人工肛門増設術

シートン法と内科的治療を行っても肛門部の症状が落ち着かない場合、直腸膣瘻などの複雑な病変を合併している場合、また便失禁や頻回の排便などで日常生活に大きな支障を来している場合には、肛門に便が流れていかないようにするために『ストーマ(人工肛門)を造設する場合があります。(肛門を使わないようにする)

 

人工肛門には『一時的人工肛門』と『永久的人工肛門』があります。

通常、一時的人工肛門で肛門を使わないようにし、その間に痔瘻の回復をさせ、一時的人工肛門は閉鎖し、再び肛門を使えるようにします。(人工肛門とその上下の一部を切除し、再び腸管を繋いで吻合します)

しかし、一度は回復し肛門を使えるようになったものの痔瘻をまた繰り返してしまう、あるいはストーマ造設後も肛門痛や排膿などの症状が落ち着かない場合、また癌化の疑われる場合には、直腸から肛門部までを切除して永久的なストーマとする直腸切断術が行われることになります。

ストーマの造設は、肛門の痛み、排泄痛、膿、発熱などQOLが改善します。しかし一方で、一時的人工肛門と違い、永久的人工肛門は文字通し永久的に自分の肛門は使えません。生涯人工肛門になります。

完全に良い、とは言い難く、自尊心も大きく傷つきますが、多くのメリットがございます。生涯人工肛門ではありますが生涯肛門部病変からオサラバできる面での天秤になりますが、みなさん最初こそショックを受けますが慣れると快適で日常が楽しくなったとよく聞きます

※私も一時的人工肛門は増設しましたが、やはり最初はショックでしたが慣れると本当に気楽でした。お尻の問題がないって素晴らしい。

 

次回、『人工肛門ってどんなもの?』に続きます。

 

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