花粉症シーズンは春だけでない|アレルギー治療『長期維持療法』と『脱感作療法』
やっと涼しくなってきましたね。というよりむしろ肌寒い。10月ともなれば当たり前っちゃ当たり前ですが、ついこの間までまだ夏日がありましたもんね。
秋らしい季節が年々なくなって、夏から一気に冬に向かう様で、体調管理も難しくなってきた近年。
さて、タイトルの通り花粉症についてですが、春シーズンに症状が酷い方が多いかと思いますが、秋花粉というものもあり、8月頃から飛びはじめ、今くらいがピークです。そのため秋にも酷くなってしまう方もまた少なくありません。
私がそうです。
今回は花粉症をメインに据えたアレルギー治療について、どのような治療法があるのか、まとめていきたいと思います。
とくに後半の根治療法である脱感作療法に興味がある方は前半はスキップしていただいて、後半から閲覧ください。
花粉症の原因は?
IBDは花粉症が酷くなりやすいというお話は、『IBDと花粉症』 でお話しましたが、そもそも花粉症の原因とはなんでしょう?
これは『アレルギーそのものの原因』ではなく、『アレルギー症状が過敏(過剰)に現れる原因』のお話ですが、
コレ!っていうハッキリしたものは全解明はされていません。
SNSやYouTubeなどで『原因』といわれているモノもありますが、それらも一因ではありますが、それのみとはいえない、1つの原因とハッキリしていないのが花粉症ですね。
どんな原因や要因が考えられている?
主に3つでしょうか。
- 戦後、杉を植樹しすぎた
- 舗装路が増えた
- 抗生物質の服用
①と②は関連していますね。戦後に建材目的で杉をたくさん植えたことで花粉の飛散量が格段に増えたこと、そして②は戦後の復興で土の道や敷地が少なくなったことにあります。
花粉は土の上に落ちるとそれほど舞い上がりませんが、舗装路の上ではふわふわと舞ってしまうのですね。
飛んだ花粉の行き場が、自然にはない。なので花粉の飛散がとても拡大してしまっています。
③がちょっと難しいのですが、近年、抗生物質の服用が花粉症と密接な関係にあることが明らかになりました。
とはいっても、そう珍しいことでもなく、『風邪と抗生物質』でもお話しましたが、抗生物質が殺す菌は、風邪などの病気を引き起こす菌だけではなく、腸内細菌叢(腸内フローラ)をも殺してしまうためです。
どれくらいかというと、ほとんど。
戦後、抗生物質の普及により、多くの病気に対抗できるようになりましたが、反面、腸内細菌叢を壊してしまうことで花粉症になりやすいということがわかりました。
何故、近年になって明らかになったかといいますと、戦前は花粉症がほとんどなかったからだそうです。
そのため、戦後の抗生物質の普及が原因であろう、という直結した考え方があるのですが、原因としてこれのみではないことはわかるかと思います。
①②③、どれも関与していますよね。
『再確認しよう、風邪と抗生物質』はコチラ↓
腸内細菌叢(腸内フローラ)を整えると花粉症が治る?
治る!とまではいえないことは『IBDと花粉症』でお話した通りですが、改善の見込みはおおいにあると思います。
要因の1つに抗生物質の服用がありますね。私たちIBDに限ったことではありませんが、1度にほとんどが殺されてしまうわけですから、都度、再構築する必要があります。
そして腸内細菌叢が整いますと、アレルギー症状が緩和されます。
しっかりとお腹の調子は整えたいですね。
しかし、私たちの場合はそう簡単なことではありません。
なにしろ炎症性腸疾患、たとえ寛解していても慢性的に絶えず微弱な炎症が腸管にはあり、下痢もしやすいです。下痢をすると、腸内細菌は外へ排泄されてしまいます。
そのため、腸内細菌叢の維持はとても難しいです。
というより、常に維持することは実質不可能といえるでしょう。
ですが、不可能だからといってなにもしないでいることも望ましくはありません。
抗生物質を服用し下痢をしたら、すぐに再構築できるよう、日頃から腸活には気を払う必要がありますね。
IBDと花粉症はコチラ↓
さて、ここから先が今回の本命、少し踏み込んだお話になります。
花粉症治療って、どんなことしてる?
花粉症の治療法は、根治できる治療はありませんが(※根治療法はあるが、100%ではない→後述)、改善させる治療方法は様々ございます。
抗アレルギー剤だけでなく、漢方薬ですとか、お茶、腸活、ツボ押し、多種多様にあります。
あんなん嘘!なんていう投稿もSNSでは見かけますが、いずれも個人差が大きいもので、必ずしも特別効果が高いとは言い難いものがあります。しかし無意味なことでありませんので、興味のある治療法がありましたら試してみるのも良いですね。
※勿論、医師と相談の上での適切な処方が前提です。
そんな様々な治療法がある中で、今回お話したいのは私が行っている通年で抗アレルギー剤を服用する治療『長期維持療法』、それとは別の『脱感作療法(減感作療法)』です。
※私個人が行っている治療で、体験談と解釈してください。
まずは簡単なほう、通年で抗アレルギー剤を服用する治療。
長期維持療法(通年性抗アレルギー薬の維持投与)
これは、【効果は穏やかで副作用が少ない抗アレルギー薬を、通年にわたって長期服用し、アレルギー反応そのものの過剰な起こり方を抑える】
といった目標の治療法です。
耳鼻科やアレルギー科では、
「アレルギー反応の閾値を下げる(=過敏になりにくくする)」
「症状が出ない時期も薬を続けて、免疫反応を安定させる」
といった目的で、『第二世代抗ヒスタミン薬』などを年間を通して服用する治療方針を取ることがあります。
このような方法を医学的には【維持療法(maintenance therapy)】【長期管理療法(long-term management)】などと表現されます。
※当然ですが絶対的に医師の指導の元で行います。
※私はこれを継続しています。
この、ずっと服用を続けることに抵抗を感じる方は少なくはないとは思いますが、個人の価値観で現代医学と医師と近年のお薬を信用するしかありませんね。
※私は20年くらいは続けていますが問題はありません。
過敏になりにくくする、免疫反応を安定させるというのは、
①効果はそれほど高くはないけど長期的に服用を続けることができる抗アレルギー剤を服用し続けることで、まずアレルギー症状を緩和、改善します。
②強いアレルギー反応が起きない状態を維持することで、シーズンで抗原が大量に侵入してきた際に症状は起きますが過剰な反応が起きないようになります。
③これをずっと継続し、症状の安定化をします。
ようするに花粉症の場合、シーズンがきたときに症状があまり酷くはならない、ということです。
多くの方がシーズンになって症状がでてから対策をされているかと思いますが、そうした『対処療法』に対し、こうした療法は『予め備える療法』、予防に近い療法ともいえますね。
それでも副作用とか怖い。どんなお薬がある?
この治療に用いられる薬は主に以下のような「第二世代抗ヒスタミン薬」です
一般名:(製剤名)→特徴
・オロパタジン:(アレロック)→ 比較的効果が強め。眠気は中等度。
・デスロラタジン:(デザレックス)→ 非鎮静性。眠気ほぼなし。長時間作用型。
・ベポタスチン:(タリオン)→ 作用発現が早い。眠気はやや出る場合も。
・フェキソフェナジン:(アレグラ)→ 非鎮静性。眠気が非常に少ない。
・ロラタジン:(クラリチン)/エピナスチンクラリチン:(アレジオン) →非鎮静性。副作用が少なく通年服用向き。
・レボセチリジン:(ザイザル)/セチリジン:(ジルテック) →効果強め。人によっては少し眠気あり。
これらは眠気が少なく、副作用が軽いため、医師の判断で通年服用(maintenance use)が可能です。
上記のような【第二世代抗ヒスタミン薬】とは、
アレルギー反応で放出される『ヒスタミン』という物質が、くしゃみ・鼻水・かゆみなどを引き起こします。
それを抑制するのが【抗ヒスタミン薬】です。
第一世代に比べて眠気が少なく、効果が長く、日常生活に支障をきたしにくいのが第二世代の特徴です。
そのため、長期的・通年的な服用(維持療法)にも向いています。
この中のお薬ですと、『アレグラ』はドラッグストアでも購入できるようになりましたのでご存知かと思います。
たくさん種類がありますので、眠気がでる方、倦怠感がでる方、まったく効果がない方。それぞれに合うお薬を選択できるだけ、幅広くあります。
・症状がそれほど強くない方はシーズンがきてからドラッグストアで購入するという『対処療法』も悪手とはいえませんが、酷い方はやはり一度病院へ受診することが望ましいです。
というのも、花粉症が酷い方は、他にもアレルギーを持っている方が多いのです。そのため、それらの治療にも繋がるため、医師の診断と処方が望ましくなります。
また、ドラッグストアで薬剤師や登録販売者と相談の上、自己判断で購入することは勿論なにも問題はないのですが、1つだけ決定的なデメリットがあります。
『コスト』!!
たとえばアレグラですと、14錠で1400円ほどのお値段です。
しかし、処方薬ですと、2ヶ月分で2000円程度です。
圧倒的な差ですね。
ですので、やはり病院へ行くことを個人的にはオススメします。
通年して通院し服用を続けるのとが面倒くさい、という方もいるかと思います。
価値観と症状と手間との相談にはなりますが、それでもシーズン直前あたりに一度受診して2ヶ月分処方してもらうと楽になるかと思います。
この時、頓服薬として強い抗アレルギー剤も処方してもらうと良いでしょう。【セレスタミン】などのステロイド製剤になるので、あくまでもどうにもならないほど酷いときの頓服です。
次は少し難しい、根治療法【脱感作療法:減感作療法(抗原特異的免疫療法)】についてです。
脱感作療法とは?
元々は心理学の用語で、読んで字のごとく、『感じて、作用することから、離脱する』。ありていに言いますと、『少しずつ慣らしていくことで過敏に反応しないようにする』という心理学の精神療法です。
この心理学用語は、アレルギー治療と仕組みがとても似ているため、アレルギーに対する内科治療でもこのように呼ばれるようになりました。
アレルギー治療では、『脱感作療法』あるいは『減感作療法(抗原特異的免疫療法)』と呼ばれています。
アレルギーの治療での脱感作療法ではどんなことをしている?
たとえば、子供の頃にかなり重めのアトピー性皮膚炎があった方など記憶にあるかと思いますが、アレルギーを引き起こす抗原(アレルゲン)を絶つ、ということをしたかと思います。
主に卵などの食事の制限ですね。
IBDの治療でも考えられていることですが、腸管にとって刺激となり炎症を起こしてしまう現象はアレルギー症状(免疫の過剰防衛)であるため、抗原になりやすいたんぱく質の制限なども食事制限として行う場合がありますね。
動物性たんぱく質の制限など、キャリアの長いベテランさんは昔はよく耳にしたかと思います。
※現在はそれほど強く推奨されてはいません。
アレルギー治療での脱感作療法は、アレルギーの発生に関連する物質(アレルゲン:抗原)を、意図的にごく少量体内に投与することで、アレルギー反応に身体を慣れさせ、ゆっくりと、次第に症状を緩和していく治療法で、抗ヒスタミン薬(アレロックなど)の内服のような、一時的に症状を抑えるための対症療法とは異なり、『アレルギー体質の改善を促す根本的治療』として有効であると考えられています。
これが、根治療法ですね。
アレルギー反応を起こさない体質にすることを目標としており、この点が長期維持療法との明確な違いになりますが、しかしながらこの治療法すべての患者さんの花粉症が治る、というわけではありません。
80%以上は大きな改善がみられるものの、20%ほどは効果がない場合があります。
そのため、根治療法としてはまだ不完全な治療法で、実際には完全にOKという水準を達成することは難しいのです。
しかし、たくさん摂取しなければ大丈夫、という水準にまで持っていくことを十分可能としていることはデータからわかりますね。
症状が大きく緩和するといった効果は安定して得られる治療です。
なんで根治しない?
理由はたくさんありまして、医師ではないので細かく説明することはできませんが、単純な理由としてアレルギー反応の原因となっている抗原が1つとは限らないから、というのがあります。
脱感作療法の適応では、特定の抗原を少量ずつ投与し慣らしていきますが、どんな抗原でも適応というわけではないのです。
脱感作療法の適応
花粉症だけではなく、気管支喘息やアトピー性皮膚炎、ハチアレルギーなどにも適応されます。勿論、保険適応で治療を受けることができます。
この治療法は5歳からはじめることが可能です。
脱感作療法の治療手段と効果
●『皮下注射免疫療法(SCIT)』と『舌下免疫療法(SLIT)』があります。前者は注射、後者は舌の下に錠剤あるいはアレルゲンエキスを毎日投与するやり方になります。
いずれも、抗原を低濃度から少量ずつ注射または舌下で投与していくことで、抗原に対する抵抗力を強くして(免疫寛容の獲得)アレルギー症状を出にくくします。
●効果について
即効性はなく、3~5年という、数年単位での治療となります。
スギ花粉症の舌下免疫療法の効果については、2シーズン続けることで寛解された方が17%、症状が改善された方が67%というデータがあります。
ダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法の効果については、1年間服用すると、早い方で3ヶ月目から効果が現れ1年後には22%程度症状が改善するといったデータがあります。
ちなみに、用いられる抗原となる物質は、ダニやスギなどの天然物から抽出したアレルゲンエキスであり、合成医薬品ではありません。
花粉症の外科治療
あまり詳しくないのでさらりとお話しますが、
鼻づまりが酷すぎる場合には、鼻の粘膜を切除して小さくし、鼻の通りをよくする手術、
くしゃみや鼻みずが酷すぎる場合にはくしゃみや鼻みずに関係する神経を切断することで症状を軽くする手術。
などがあります。
可能な限り手術は避けたいですよね。
まとめ
花粉症の治療法には、
長期的に抗アレルギー剤を服用することでシーズンでの過剰は反応を抑制する治療【長期維持療法】と、
シーズンだけ服用する【対処療法】、
そして、低濃度の抗原を長い年月かけて少しずつ投与することで免疫寛容を獲得し、根治を目指す【脱感作療法】
がある。
そして最悪、外科的な処置がある、というお話ができたかなと思います。
「風邪とか他人にうつる病気じゃないし……」
と甘くみないで、病院へ受診することが望ましいですね。
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