薬物療法-④生物学的製剤の種類と特徴

クローン病治療で使用される生物学的製剤の種類とそれぞれの特徴を解説 クローン病
クローン病内科治療
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それでは、前回のレミケードの例で生物学的製剤とはどんなものか、ざっくりわかったかと思いますので、リストの残り②~⑤まで、お薬の基本情報をまとめてご説明します。

  • ①レミケード:インフリキシマブ(点滴)
  • ②ヒュミラ:アダリムマブ(注射剤)←ここから紹介
  • ③ステラーラ:ウステキヌマブ(注射剤・点滴)
  • ④エンタイビオ ベドリズマブ(点滴)
  • ⑤スキリージ リサンキズマブ(注射剤・点滴)
  • ⑥シンポニー:ゴムリマブ(注射剤)
  • ⑦オンボー:ミリキズマブ(点滴→皮下注)
  • ⑧トレムフィア(皮下注・点滴)

※生物学的製剤以外の選択肢として、JAK阻害剤というお薬があります。こちらはクローン病では1種のみしかまだ適応でないため、詳細はカテゴリー潰瘍性大腸炎の潰瘍性大腸炎の治療・内科的治療⑤JAK阻害剤にてご紹介しています。

 

②ヒュミラ:アダリムマブ(注射剤)

ヒュミラ:アダリムマブ(注射剤)皮下注40mgの実際の画像

こちら効果と作用はインフリキシマブと同様ですが、『完全ヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体製剤』です。

インフリキシマブとの投与の違いは、患者さん自ら在宅で皮下注射できる点で、通院の手間が省けます。

初回→2週→4週以降は2週サイクルで皮下注射します。

クローン病患者さんって、お肉少ないですよね。私もアダリムマブを使っていた時期がありますが、肉をつまむのが結構むずかしかったです。

それと、注射針ですがこれまたなかなかに『ザ・針』です。とても濃い液体ですので針の太さが必要なことと、注入もゆっくりになりますので、糖尿病のインスリン注射のように小さくて細く、サッと済むものではありません。

最初はちょっと怖いかもしれませんね。

※私が使ってた頃と違って、現在はペンタイプでかなり細い針になってます(それでもザ・針)。

⚠️『完全ヒト型』というのがちょっとしたポイントになりまして、患者さんの中にはインフリキシマブを避けたがる方もそれなりにいらっしゃるんですね。というのは、インフリキシマブはキメラ型であるからです。

食品とかと同じように、『何由来か』という部分って、結構気にされる方は気にされます。

しかしながら、少なくとも生物学的製剤に関しましてキメラ型が劣っているとか副作用が強いとか、そういったことはありません

むしろ、効果の程はキメラ型であるインフリキシマブのほうが高く安定している傾向にあります。

勿論、なにを使うかの判断は患者さん一人一人の判断ですが、偏見で忌避することは避けるべきことです。大切な治療ですから。

 

③ステラーラ:ウステキヌマブ(注射剤・点滴)

ステラーラ:ウステキヌマブ(注射剤)皮下注45mgの実際の画像

ウステキヌマブは、クローン病の主な原因物質の1つと考えられている『インターロイキン(IL)の働きを抑える』お薬です。

このお薬のターゲットはサイトカインの『インターロイキンIL-12とIL-23』で、この物質の働きを抑えることで、免疫を抑制します。

初回だけ点滴注射します。その8週間後に皮下注射し、それ以後は12週間の間隔で皮下注射を続けます。

なお、投与の間隔が8週を超えると効果が弱まるようであれば、間隔を8週間まで短くすることがあります。

投与間隔の短縮や、投与を継続するかどうかは、患者さんの症状や病気の経過、副作用などを考慮して医師により慎重に判断されます。

 

④エンタイビオ:ベドリズマブ(点滴)

こちらは、2019年5月よりクローン病に対しても使うことができるようになった新しいお薬です

このお薬は白血球の一種であるリンパ球が腸粘膜へ入り込んで引き起こす炎症を抑えつつ、腸以外への影響は少なくなるように開発された生物学的製剤です。

ターゲットは消化管の炎症において重要な役割を担っている『α4β7インテグリンというタンパク質です。ベドリズマブはこのα4β7インテグリンに対して働く抗体を精製した生物学的製剤で、α4β7インテグリンと結合しTリンパ球の遊走(腸への移動)を抑えます。

初回点滴注射→2週→6週に投与し、それ以降は8週間の間隔で点滴注射を続けます。

※3回以上投与しても効果がない場合、この薬を継続して使用するかどうかは、患者さんの症状や病気の経過、副作用などを考慮して医師により慎重に判断されます。

 

⑤スキリージ:リサンキズマブ(注射剤・点滴)

スキリージ:リサンキズマブ(注射剤)皮下注75mgの実際の画像

スキリージは、はじめは点滴で『活動期』の腸管粘膜の炎症による症状を改善して寛解状態に導き、それ以降は『オートドーザー』という器具を使った皮下注射で寛解状態を維持する生物学的製剤です。

ターゲットは、サイトカインの一種である『インターロイキン(IL)-23で、スキリージは、このIL-23の働きを抑える抗体で、炎症を引き起こすさまざまな物質が作られないようにして、クローン病の症状を改善するします。

寛解導入療法では4週間隔で3回(初回、4週、8週)点滴静注します。維持療法に用いる場合は、点滴静注による導入療法終了4週後から、8週間隔で皮下注射します。皮下注射は「オートドーザー」という器具を用いて、医師または看護師が行います。

使い方がちょっと他のと毛色が違いますね。

 

⑥シンポニー:ゴムリマブ(皮下注50mgシリンジ)

『シンポニー』:ゴムリマブ(皮下注50mgシリンジ)の実際の画像

完全ヒト型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体製剤。

関節リウマチから潰瘍性大腸炎患者において適応となり、2017年にクローン病でも承認されました

こちらはレミケードやヒュミラと同様に、TNF-αと結合することにより、TNF-αによる生体内情報伝達を阻害します

通常、成人にはゴリムマブ(遺伝子組換え)として初回投与時に200mg、初回投与2週後に100mgを皮下注射します。

初回投与6週目以降は100mgを4週に1回、皮下注射します。

本剤の投与開始後、14週目の投与までに治療に対する反応がみられない場合には、本剤の投与を継続するべきかどうかも含め、治療法について再考します。

ヒュミラと同じく皮下注射ですが、こちらは基本的に医師が注射を行います。

治療開始後に十分な指導・手順の習得ができ、自己注射の適応が妥当と判断された場合には自宅などで自己注射をすることも可能になります。

怖かったらずっと先生に注射してもらうことも勿論可能です。

 

⑦『オンボー』:ミリキズマブ(点滴→皮下注射)

『オンボー』:ミリキズマブ(皮下注射100mlシリンジ)の実際の画像

2023年に潰瘍性大腸炎で承認され、2025年にクローン病でも承認されたの生物学的製剤です

ステラーラやスキリージと同じく、インターロイキン(IL)の働きを抑える生物学的製剤です。中等症~重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入、寛解維持目的で使用します。

ミリキズマブのターゲットはサイトカインの1つである『インターロイキンIL-12とIL-23』で、この物質の働きを抑えることで、免疫を抑制します。

・併用禁忌!

JAK阻害剤との併用不可!!

他の生物学的製剤はヤヌスキナーゼ(JAK阻害剤)と併用ができますが、ミリキズマブは併用不可です!

・用法

通常、成人には1回300mgを4週間隔で3回(初回、4週、8週)、点滴で静脈内に投与します。

治療効果があらわれた場合はそれを維持する目的で、点滴による治療が終了した4週後から、1回200mgを4週間隔で皮下注射します。

3回の点滴投与で効果が不十分であれば、さらに3回点滴投与による治療を追加することもあります。点滴での投与の追加や、このお薬による治療を継続するか否かは、患者の症状や病気の経過、副作用などを考慮して医師により慎重に判断されます。

他の生物学的製剤と同様に、免疫機能を抑制するため、感染症には十分な注意が必要なことと、身体がお薬に対し強く反応して全身状態が悪化する、重い副作用(インフュージョン・リアクション)が起きることがあるため、十分な対処ができる設備の整った医療施設での使用が推奨されています。

 

※ここまでのお薬情報の参考元:IBDプラス/潰瘍性大腸炎の治療で使用する主なお薬一覧

 

⑧『トレムフィア』:グセルクマブ(皮下注・点滴静注)

トレムフィア200mgの商品画像/薬事日報より引用

2025年最新🆕

トレムフィアは、既存治療で効果不十分な中等症~重症の活動期クローン病・潰瘍性大腸炎に対して、日本では2025年に潰瘍性大腸炎、同年6月にクローン病で承認された、IL-23を阻害する完全ヒト型モノクローナル抗体製剤です。
潰瘍性大腸炎では 2025年3月27日 に、クローン病では 2025年6月24日 に承認されました。

トレムフィアは、IL-23のp19サブユニットに結合して炎症を抑えるだけでなく、炎症性単球モデルでIL-23産生細胞表面のCD64にも結合し、産生されるIL-23を捕捉する dual-acting(二重作用) という特徴があるとされています。

トレムフィアの特徴作用機序

IL-23のp19サブユニットに結合し、炎症を抑制。粘膜の治癒に寄与する。

特徴:
従来の治療法で効果が得られなかった患者に対し、高い内視鏡的改善効果が示されている。

用法・用量

・寛解導入では、
点滴静注:UC・CDともに 1回200mgを0・4・8週
皮下注導入:UC・CDともに 1回400mgを0・4・8週
で使用します。

・その後の維持療法は、
基本 100mgを8週間隔で皮下注
状態に応じて 200mgを4週間隔で皮下注
が可能です。

製剤には 100mgシリンジ、200mgシリンジ、200mgペン があります。

※潰瘍性大腸炎では、2025年3月の承認時点では導入は点滴静注、維持は皮下注でしたが、2026年2月19日 に皮下注による寛解導入も承認され、現在は潰瘍性大腸炎でも導入時に点滴静注または皮下注の選択が可能となっています。

現時点での期待と評価

トレムフィアは、IL-23p19を標的とする新しい選択肢として期待されています。特に、UC・CDの両方で使えることや、現在は導入時から点滴静注と皮下注の選択肢がある点は、使い勝手の面でも注目されています。

一方で、日本でのIBD適応はまだ新しく、実際の診療での評価や使い分けはこれから蓄積されていく段階です。現時点では、「有望な新薬だが、実地での位置づけは今後さらに見えてくる薬」と考えるのが近いと思います。
とにかくまだ浅いので臨床で本当にどう位置づくかはこれから。

※2ヶ月ほど前から導入したきくらげの知人から聞いている個人体験の範囲内では、まだハッキリとした手応えは聞いていません。導入したばかりですからね、まだあと数ヶ月は手応え確認できるまでかかるかなと予想してます。仲間内の体験談は貴重な参考になりますよね。

※お薬の参考元:KEGGトレムフィア

 

最後に注意点

いずれの生物学的製剤も、インフュージョンリアクションのような危険な副作用が起こる可能性があることと、免疫の働きを抑制するので感染症になりやすいこと、化膿しやすいということを覚えておいてください。
⚠️特に歯科では、慢性的な歯肉炎が続いたり、親不知を抜く際には細心の注意が必要になりますので、くれぐれもお気をつけくださいませ。インプラントは不可です。

※ほんとに危険!!

 

まとめ

生物学的製剤は種類が多く、選択肢の幅も広くなりました。
レミケードしかなかった時代とは違い、1つのお薬が使えなくなっても他に選択肢があるというのはありがたいことです。
さて、これまでご紹介してきたように、どのお薬もそれぞれターゲットが違い、効果の理屈が少し異なります。
しかし、どれが優れているかと一概に言えるものではありませんし、医師もそうした断定はしません。
患者一人一人の症状の違いや、とくに相性という個体差が大きい領域です。
つまり、「効く理屈」と「自分の体で実際に合うか」は別 なのが、この領域の1番難しいところであり、試してみなければわからない点も否めません。
しかし、生物学的製剤はIBD治療において寛解導入・維持ともに大きな効果が期待されるとても重要なお薬です。
主治医とよく相談の上、ご自身が納得できるお薬を選択することが望ましいですね。
ちなみに、こうしたお薬って地元の歯科や花粉症で耳鼻科などのクリニックを受診するとき、しばしば先生に「レミケードを使っている」と伝えると、「どういう薬?」と聞かれることがあります。
あまり知られてないんですよね、専門性が高すぎるので。
なのでこうしたとき、
サイトカインを抑制するやつです
と答えるとすぐ理解してくれますので、この常套句はオススメです。

 

生物学的製剤のお話はこれで終わりです。次回は『薬物療法-⑤日常のお供のお薬』です。

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※この記事は2026年4月に一部更新しました。

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