IBDの手術後はどう過ごす?退院までの流れと「歩くこと」の大切さ
前回、手術前の準備などについてお話しましたが、今回は術後のお話です。
術後は退院までどんな運びになるのでしょう?
ここも、施設によって結構まちまちなので一概にはいえませんが、おおむね共通する一般的な術後の退院までの流れを体験談を交えてお話していきたいと思います。
一つ一つみていきましょう。
手術直後
手術が終わった直後は、まず全身状態の管理が優先になります。
病院や手術内容によってはICUやHCUに入ることもありますし、そのまま病棟へ戻ることもあります。ここでは呼吸、血圧、脈拍、痛み、出血、尿量などを細かく見られます。
腹腔鏡ではそのまま病棟へ戻ることも多く、開腹ではICUやHCU管理になることもあります。
※きくらげの手術体験としては、術後意識はちゃんとハッキリあるけど指しか動かせない状態で、ナースコールは手に固定されていてすぐに呼べるようになってます。
眠れるわけでもなく、お腹から滲出液が垂れてきて股のあたりが気持ち悪くてナースコールしてガーゼを交換してもらう、ずーんとした身体と不快感。離床する朝までが一番の苦行でしたね。
術後1日目ごろ
早い段階で離床が始まることが多いです。
最初はベッド上で体を起こす、足を動かす、座るところから始まり、状態がよければ立つ、病棟内を少し歩く、という流れになります。これは肺炎や血栓、腸の動きの回復を助けるためでもあります。
びっくりしますよね、すぐに離床(ベッドから離れる→歩く)って。でも基本的にどこの施設でも共通です。
※きくらげの体験では、ちゃんとナースがしっかりと支えてる状態で起き上がり、ベッドの脇に座り、ゆっくりと立ち上がり、その時点でくらくらと貧血症状がでますがその場で足踏みをして血圧を上げてあげると少しやわらぎ、呼吸を整えてからそろりそろりと、ナースと一緒に歩いて病室へ帰る、といった手順で離床です。
しかし、1回目から3回目の手術まで、あまり術後の経過が良くなく、離床ができずにいた経験もあり、そのときはすごく不安だし焦りがありました。離床の重要性はよく理解していたので。
逆にスマートに離床できた4回目5回目は快適ささえ感じました。
尿道カテーテル・ドレーン・点滴
尿道カテーテルは、術後しばらくして全身状態や尿量が安定すれば抜去されることが多いですが、骨盤内の手術や状態によっては少し長めに入ることもあります。
点滴も、飲水や食事が進んで必要量が取れるようになるまでは続きやすいです。ドレーンが入っている場合は、排液の量や性状を見ながら抜去時期が決まります。
※きくらげの体験では、離床が上手くいかないほど経験悪かった1回目から3回目は尿道カテーテルもドレーンも抜けるまで1ヶ月かかったこともあります。
こうなりますと、寝返りもうてず、褥瘡(じょくそう)といういわゆる床擦れとかの問題もでてきます。離床できないのは私にとっては地獄です。
離床がスマートにできたときは、ICUから病室へ帰って、次の歩行はトイレまでコースでナースと歩き、成功したら尿道カテーテル抜けました。しっかり歩いて自分でトイレいきましょうね、ということです。
ドレーンのほうはなかなか抜けないもんですね。
傷の処置
創部は毎日観察され、赤み、腫れ、熱感、滲出液、痛みの強さなどを見ながら管理されます。
最近は創部管理もかなり簡略化されていることがありますが、開腹創であればガーゼ交換や診察が入ることがあります。感染や創部トラブルがなければ、経過観察中心で進みます。
※きくらげの体験では、朝と午前中の回診と夕方の回診で先生が診てくれましたね。自分の手応えと創部の状態は案外一致してるもんで、体感的に良い調子で歩けてるぞ、痛みも減ってきてるぞ、というときはその手応えに応じて創部の状態もやはり良くなってきてました。
経験が良くなかったとくに1回目のときは、創部の化膿も酷く、滲出液も多く、傷はくっつかないし、ドレーンからの膿も多いし、最悪でした。
飲水・食事の再開
腸の動きや状態を見ながら、まずは飲水、その後に流動食、三分粥、五分粥、全粥、やわらかい食事…というふうに段階的に上がっていくことが多いです。
ただしここは病院差がかなりあり、ERAS寄りの施設では比較的早めに飲水・食事を進めることもあります。逆に、腸の動きが遅い、吐き気が強い、吻合部の様子を慎重にみたい、などの場合はゆっくり進みます。
※ここは、施設によってかなり変わると思います。きくらげは2つの病院で手術の経験があるのですが、一方は内科に強みのある病院、もう一方は外科に強みのある病院でした。
内科に強みのあるほうは飲水・食事にはかなり慎重で、じっくりゆっくりでしたし、最終的に食事も五分粥止まりです。しかし外科に強みのあるほうでは離床した日から「口の中だ溶けるキャラメルとかならOK」で、食事もわりとスピーディーに上がり、最終的に普通のご飯になり、また量も結構多かったです。
ここで注意点。ベテランさんに意外と多いのですが、慣れてるからといって油断しちゃうケースですね。食事が開始されると結構自分で売店いってカップスープとか買ったり食べたりしすぎちゃう。結果、腸閉塞になっちゃうパターン。同じ病室で何人もみてきました。
きくらげは慎重派なのでむしろ食事はちょっと残すくらいですね。ちょっと残しても栄養管理大丈夫なのは次の経腸栄養剤のおかげ。
経腸栄養剤
IBDでは、術後の栄養管理として経腸栄養剤が入ることもあります。
食事だけでは足りないときの補助として使われたり、食上げの途中で併用されたりしますが、ここはかなり個人差があります。もともとの栄養状態、病勢、術式、病院方針で違いやすい部分です。
※ここもきくらげの体験では内科に強みのある病院と外科に強みのある病院とでは結構判断に差がありました。内科のほうは経腸栄養剤と上がり食との併用をしっかりしてます。食事が上がっていく・量が増えていく→これを段階的にちゃんと食べれて問題なければ少しずつ経腸栄養剤を減らしていく→最終的に経腸栄養剤が無くなれば御の字。
外科のほうでは経腸栄養剤を上がり食の最初だけ飲んであとは食事だけでした。経腸栄養剤を用いない分、食事で摂取しなければならないので当然食事の形態や量を上げていくのも早くなります。
これ、どちらが正しいか?そこにおそらく正解はありません。少なくとも素人にはわからない。ただどちらの場合でも、先生と相談しながら食事のアップは決めていくので、まだ自信ないなぁと思ったら経腸栄養剤を出してもらえばいいだけですし、いけそうな自信あったら上がり食でよく食べて栄養をとればいいだけです。
良し悪しを簡単に決めたり、他人にあれはダメこれはダメ、これが正しいなど押し付けてはいけません。
点滴が抜けるころ
飲水と食事がある程度安定し、脱水や電解質の問題がなく、内服や栄養摂取で回せると判断されると、点滴は減っていき、最終的に抜けます。
患者側の感覚としては、点滴が抜けるとかなり“退院が見えてきた感”が出ることが多いと思います。
※きくらげの体験では、食事が最終形態になる頃には抜けてましたね。内科ですと五分粥がMAXなのでここで点滴抜くかどうかの判断。外科ですと、全粥になったときにはもう抜けたと記憶してます。
退院の判断
退院の目安は病院ごとに違いますが、一般には、
「熱がない、痛みがコントロールできる、歩ける、食べられる、点滴が不要、排便や排ガスの確認がとれている、創部や全身状態に大きな問題がない」
といった条件がそろって判断されます。一般的な大腸手術では術後7〜10日程度、施設によっては術後7日程度を目安にしているところもありますが、IBDは栄養状態や炎症、合併症の影響で延びることもあります。
※きくらげの体験では、点滴抜けたら問題なかったら2日くらいで退院でしたね。判断早いです。ちょっと不安になる。もう少し入院していたい気持ちはあっても、状態が安定していれば退院が進みます。
当然ですが、問題があれば退院させられないので延期です。
とても大事な「歩く」こと
術後、離床が上手くいったら執刀医から「たくさん歩いてください」と言われると思います。
これは、根性論ではなく、ちゃんと理由があります。
⚠️重要:術後に歩くことが大事と言われる理由⚠️
手術後は、
「傷があるのだから、できるだけ安静にしていたほうがいいのでは」
と思う方も多いと思います。
実際、初めて手術を受ける方ほど、
「動いたら傷が開きそうで怖い」、「術後に歩くなんてありえない」
と感じやすいかもしれません。
術後に歩くことはIBDに限らず基本共通なのですが、私の身近な多くの手術経験をすることになったほとんどの人たちが歩くことを拒否する傾向がとても強いです。
確かに、昔(すごく昔)は、術後は安静でした。ですが現代医学は違います。
術後に早めに体を起こしたり歩いたりするのは、無理をさせるためではありません。
回復を早め、合併症を防ぐために必要だからです。
長く寝たままでいると、呼吸が浅くなって肺の働きが落ちたり、血流が悪くなって血栓ができやすくなったり、腸の動きが鈍くなって術後イレウス(腸閉塞)の原因になったりします。
一方で、早めに離床して歩くことで、呼吸状態が改善し、血流がよくなり、腸の動きも促されます。
その結果として、肺炎や血栓症、癒着や腸閉塞などの術後合併症の予防につながるとされています。
また、術後早期回復プログラム(ERAS)でも、早めに立つ・歩くことは回復を促す基本のひとつとされています。
安静にしすぎるほうが、かえって筋力や呼吸機能の低下を招き、回復を遅らせることがあるのです。
勿論、むやみやたらに歩かされるわけではありません。
血圧や酸素状態、痛み、全身状態を見ながら、安全にできる範囲で少しずつ進めていきます。
つまり、ちゃんとどの程度まで動いて大丈夫かは医療サイドのほうで確認と判断をしているので、動いてくださいと言われたら動いて大丈夫ということなのです。
医療サイドは「動いたほうが早く治るから」と【感覚】で言っているのではなく、【根拠】として合併症を防ぎ、回復を助けるために必要だから勧めているのです。
怖い気持ちは自然ですが、“動くな危険”ではなく、“安全に動くことが治療の一部” なのだと理解しておくと、術後の不安も少し減るかもしれません。
しかし、どれだけ説得されても怖いものは怖いし、どうしたって傷口が開くかも、という不安は拭いきれないかもしれません。
それはなぜか?
それは、「術後の体の中で何が起きているのかが見えにくいから」です。
素人にとっては当然の不安ですし、だからこそ、なぜ医療者が歩くことを勧めるのかを知っておくことが大切だと思います。
傷口がそう簡単に開くことはない(100%とはいえないけど)理由をここで説明します。
まず、そもそも誤解している方が多いのですが、腹部の手術では、皮膚の表面だけを軽く閉じているわけではありません。
実際には、体の中の層を確認しながら閉じていき、とくに腹壁を支える大事な層である筋膜は、しっかり縫合して閉じられます。そのため、通常の離床や歩行で簡単に開いてしまうような作りではないのです。
日本の手術手技の資料でも、筋膜縫合は確実に行うことが重要で、通常は太めの合成吸収糸などを使って閉鎖するとされています。
つまり、見えている皮膚の傷だけで支えているわけではなく、中の大事な層から順に何層も閉じてあるんですね。
お腹の中で使うこと合成吸収糸は、抜糸はせずにそのままお腹の中に留置され、ゆっくりと数ヶ月から数年かけて体に吸収される糸です。こうした糸で体の中の大事な層をしっかり支えているため、通常の離床や歩行ですぐに創が開く前提ではありません。
そのため、医療者の管理のもとで行う起き上がる、立つ、歩くといった通常の離床で、すぐに創が開いてしまうわけではありません。実際、術後早期離床についての資料でも、患者さんが「動くと創が開くのでは」と不安を抱きやすい一方で、医療現場では早期離床が回復のために進められています。
勿論、医療に絶対はありません。
創の離開(傷が開くこと)はゼロではないですが、一般に問題になるのは、感染、栄養状態の悪さ、強い咳、腹圧の大きな負荷、創傷治癒の遅れなど、いくつかの条件が重なった場合です。
普段の離床そのものが、ただちに危険というわけではありません。腹部創閉鎖のガイドラインでも、予定手術の正中開腹ではゆっくり吸収される糸で筋膜を閉じることが勧められています。
なので、術後に歩くのは「傷に悪いことを我慢してやる」のではなく、
【傷がきちんと閉じられている前提で、回復のために必要だから行うこと】と考えるとわかりやすいと思います。
私自身の体感としても、歩けば歩くほど次の歩行が明らかに楽になり、動ける距離も伸びていきました。
離床がうまくいかなかった時と、しっかり歩けた時では、回復のスピードがまるで違ったと感じています。
もちろん無理は禁物ですが、少なくとも「動いたら傷が開くから絶対安静」というイメージとは、実際の術後管理はかなり違うのだと思います。
そして最後に、退院できるということは、元の日常生活へ戻るための段階に入ったと判断されたということでもあります。
そのため、退院後も医師の指示に従いながら、必要以上に安静にしすぎず、少しずつ動きを増やしていくことが大切です。
階段や日常動作など、病院では十分にできなかった動きを少しずつ再開しながら、筋力や体力を戻していくことが回復につながります。
とくに病院ではなかなかできなかった立体運動、階段とかですね。踏み台昇降とか、このあたりをしっかりと行って筋肉も戻していかなければなりません。
また、退院してからもずっと腹帯や腹巻きを続ける方もしばしばおりますが、保護をし続けると、腹筋の回復やお腹の体温調節など。かえって本来の機能を低下させてしまうおそれがあります。
とくに、地味な痛みがいつまでも続いたり、腹巻きをしていないとお腹が冷えやすくなってしまったりしますので注意が必要です。
退院後の腹帯や腹巻きについても、病院や医師の考え方、本人の状態によって扱いが違います。
長く使い続けるかどうかは自己判断せず、主治医の指示に従うのが安心です。
退院後の生活も勿論のこと医師の指導が大前提であり、やみくもに頑張ればいいということではありませんし、必要以上に安静にすればいいということでもありません。
こうして様々な理由を知っておくと、「ただ歩けと言われている」のではなく、「回復のために必要だから勧められている」のだと、少し受け止めやすくなるかもしれません。
まとめ
IBDの腸管切除術後〜退院までの“大まかな流れ”としてまとめると、だいたいこんな感じです。
手術後は、まず全身状態の管理が優先され、病院によってはICUやHCUに入ることがあります。その後は、早めの離床と歩行練習、尿道カテーテルや点滴の整理、創部の確認をしながら、飲水→流動食→おかゆ→通常に近い食事へと段階的に進んでいきます。必要に応じて経腸栄養剤が併用されることもあります。最終的には、歩ける、食べられる、熱がない、痛みが落ち着いている、点滴が不要、といった条件がそろうと退院が見えてきます。
そして大切な歩くということ。これは根性論などではなく医学的根拠に基づいた治療の一貫であるということ。
不安だったり怖いという気持ちは仕方ありませんし自然なことですが、医療を信頼して医師の判断に従って適切に行うこと、これが日常への復帰のリハビリです。
きくらげ個人の主観にすぎませんが、手術となると周囲から「頑張ってね」と声をかけていただけるのですが、私はいつも、手術そのものを頑張るのは医療者で、患者が本当に頑張る場面は術後の回復過程なのだと思っています。
そうです、手術中は寝てるんですから頑張りようもなく、そして術後は頑張ったら頑張っただけしっかりと手応えを感じられる、そういうものだと私は思っています。
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