熱が出るとなぜ寒い?悪寒・発熱・関節痛が起こる仕組みと対処
さて、インフルエンザが流行する季節がやってまいりました。
そんなわけで、今回は悪寒や発熱の仕組みについてお話したいと思います。
熱が出る前、
- ゾクゾクする。
- 寒い。
- 布団に入っても寒い。
- 歯がガチガチ鳴るくらい震える。
こんな「悪寒」を経験したことがある方は多いと思います。
そしてインフルエンザなどでは、
- 高熱
- 頭痛
- 関節痛
- 筋肉痛
- 全身のだるさ
が一気に出ることもあります。
厚生労働省でも、インフルエンザでは38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などが比較的急速に現れることが特徴として挙げられています。
では、なぜ熱が出る前に寒く感じるのか。
なぜ身体は震えるのか。
なぜ高熱になると関節や筋肉まで痛くなるのか。
解熱剤は、いつ使えばいいのか。
今回はこのあたりを、できるだけ一般向けに整理してみたいと思います。
※この記事は、感染症などに伴う発熱・悪寒・関節痛について一般向けに整理したものです。高熱が続く、呼吸が苦しい、意識がおかしい、けいれんがある、水分が取れない、症状が強い場合などは自己判断せず医療機関へ相談してください。
悪寒ってなに?
まず、
「悪寒=身体が冷えている」、とは限りません。
感染症などで発熱が始まるとき、身体はこれから体温を上げようとします。
このとき脳にある体温調節の仕組みが、
「今の体温では低い」
と判断するようになります。
すると身体は、
- 皮膚の血管を縮める
- 筋肉を細かく震わせる
などして、熱を外へ逃がしにくくしながら、新しく設定された体温まで上げようとします。
このとき感じる、ゾクゾクする寒さ。これが悪寒です。
意外と勘違いしやすいところですが、こうして仕組みを見てみると、実際の冷えとは異なることがわかるかと思います。
そしてこの悪寒が強くなると、
- 歯がガチガチ鳴る
- 身体がブルブル震える
ほどになることもあります。
こうした激しい震えを伴う悪寒は、
「悪寒戦慄」
と呼ばれます。
なんで身体はわざわざ熱を上げるの?
ここは少し仕組みを細かく見てみましょう。
細菌やウイルスなどによる感染や炎症が起こると、免疫反応の中で『サイトカイン』と呼ばれる物質が増えます。
IBDではお馴染みですね。
そして、その情報を受けて、『プロスタグランジンE2』などが関わりながら、脳の視床下部にある体温調節の仕組みへ影響します。
その結果、
「体温をもう少し上げよう」
という方向へ設定が変わります。
これが発熱の大きな仕組みです。
耳慣れない用語が出てきて少し難しく聞こえるかもしれません。
ありていに言えば、
『身体の体温設定が、一時的に一段高くなる』
ようなイメージです。
たとえば普段36.5℃前後で調節されているところを、
「今は38℃台くらいまで上げよう」
という方向へ切り替わる。すると36.5℃しかない身体は、
脳からすれば、
「まだ寒い」
という扱いになります。
だから、寒く感じる。血管を縮める。震えて熱を作る。
そして新しい設定温度まで体温を上げていく。
こんなイメージですね。
実際に冷えてないのに寒く感じるのは、この差です。感じているだけで冷えてはいない。けれども、脳が感染症対策にはまだ少し体温が足りないよーと感じて、上げようとするのですね。
発熱は、感染や炎症に対する身体の防御反応の一つでもあります。
そのため、旧来よく言われる、
「身体が温度を上げて、免疫が戦いやすい環境を作っている」
という表現も、かなり大ざっぱではありますが、イメージとしては遠くありません。
一般人が使う比喩としてはわかりやすいイメージではあります。
ただし実際には、
「ウイルスは熱に弱いから、とにかく温めて倒している」
という単純な仕組みではなく、
『免疫反応の一部として体温調節そのものが変化している』
と考えるほうが正確です。
悪寒がしたら必ず高熱になる?
悪寒は、
『体温がこれから上がるときに出やすいサインの一つ』
です。
ですから、
「さっきまで普通だったのに、急にゾクゾクしてきた」
というあとに体温を測ると、どんどん上がっていた、という経験がある方もいると思います。
ただし、悪寒がしたら必ず39℃、40℃まで上がるというわけではありません。
発熱の程度は、
- 感染症の種類
- 炎症の強さ
- 年齢
- 体調
- 持病
などによって変わります。個人差もあります。
また、強い悪寒戦慄はインフルエンザなどでも起こりますが、インフルエンザだけの症状でもありません。
細菌感染などでもみられるため、
- 強い戦慄が続く
- 高熱が続く
- ぐったりしている
- 呼吸が苦しい
などがあれば、医療機関への相談を考えましょう。
悪寒がするときは温める?冷やす?
悪寒が強いときは、本人はとても寒く感じています。
ただし、それは本当に身体が冷えて体温が下がっているわけではありません。
そのため、温めるべきか冷やすべきか、判断に悩むことがあるのもわかります。
では、どっち?
と言いますと、本人が楽な状態にしてあげる、という管理が望ましいです。
まず悪寒がするこの段階では、
無理に冷やすよりも、
- 布団
- 毛布
- 衣服
などで、本人がつらくない程度に温かくして休むほうが楽なことが多いです。
ただし、
- 厚着を何重にもして大量に汗をかかせる
- 熱い風呂に入れる
など、
無理に体温を上げようとする必要はありません。
身体はすでに自分で体温を上げようとしています。
必要なのは、
「寒くてつらい状態を少し楽にする」
くらいです。
逆に、熱が上がりきって、
- 暑い
- 汗が出る
- 布団が苦しい
となってきたら、今度は衣服や寝具を調整します。
悪寒のある上昇期と、熱が上がりきったあとでは、本人が快適と感じる温度も変わります。
ただし、本人が快適に、とはいっても、程度や限度というものがあります。
次で整理します。
悪寒がするとき、熱いお風呂は?
悪寒が強いと、
「身体を温めたほうがいいなら、熱いお風呂に入ればいいのでは?」
と思うかもしれません。実際、そうしている方もしばしば見聞きします。
でも、これはおすすめしません。
発熱し始めている身体は、すでにかなり負担がかかっています。
そこへ熱い入浴をすると、
- 体力を消耗する
- 発汗が増える
- 脱水しやすくなる
- 立ちくらみやめまいが起こる
など、別の負担が増えることがあります。
程度によっては、体力を消耗しすぎて弱ってしまう、脱水症になってしまう、立ちくらみで転倒してしまう、などのリスクもあります。
そのため、特に高熱があるときは、無理に入浴する必要はありません。
どうしても汗や不快感が気になる場合には、
- 身体を拭く
- 短時間のぬるめのシャワーにする
など、負担の少ない方法で十分です。
安全のため、その範囲での快適さに留めておきましょう。
そして、発熱時は水分補給も大切です。
もちろん、飲酒は避けましょう。
熱は下げたほうがいい?解熱剤はいつ使う?
ここは誤解が多いところですので掘り下げて整理します。
まず大前提として、
『解熱剤は、感染症そのものを治す薬ではありません。』
これをしっかり覚えていただきたいと思います。
解熱剤を飲んで熱が下がったからといって、
「治った」
ということではありません。
また、
「早く飲めば早く治る」
というものでもありません。
解熱剤の主な目的は、
- 熱
- 頭痛
- 筋肉痛
- 関節痛
などの、つらい症状を和らげて、休みやすくする、水分を取りやすくする、眠りやすくする、ことです。
その結果として、十分に休めるようになり、回復を手助けしてくれる。
そういう補助的なものというイメージです。
ですから、
「何℃になったら必ず飲む」
と体温の数字だけで決めるよりも、
「本人がどれくらいつらいか」
ということも大切です。
38℃台でも、
- 頭痛や関節痛が強い
- 眠れない
- 水分が取れない
というほどつらければ、解熱鎮痛薬を使う意味があります。
一方で、
39℃近くあっても比較的元気で、水分が取れて休めているのであれば、必ずその瞬間に下げなければならない、とは限りません。
また、これも大事なことですが、解熱剤を飲んだから治った、という解釈をすると、実際には治っていないのに仕事に行ったりすることになり、細菌やウイルスを他者へ移してしまうおそれもあります。
感染症は自分のことだけではない。これも頭に入れておいてほしいところです。
「熱は下げないほうが治りが早い」は?
そうとは限らないので、これも、単純化しすぎないほうがよいところです。
発熱は、感染や炎症に対する身体の大切な防御反応の一部です。
ですから、
「熱はまったく意味のない症状」
ではありません。
一方で、
「解熱剤を使ったら必ず感染症が長引く」
とも言えません。
ただ、
『必要のないタイミングでも、むやみに解熱剤を使えば、治りが早くなるわけでもない』
ということは覚えておいてよいと思います。
感染症や状況によっては、『発熱を過度に抑えることの影響』が検討されることもあります。
つまり、場合によっては抑えすぎては望ましくないこともある。
このあたりは難しい領域ですのでここでは多くは語りません。
もっと深く知りたい方は医師へ聞いてみてください。
ですから、
「熱が出た!すぐ薬!」
でも、
「どれだけつらくても絶対に薬を飲まない!」
でもありません。
『症状の程度に合わせて適切に使う』
これが一番大切です。
また、繰り返しますが、
『解熱剤で熱が下がった=感染症が治った』
ではありません。
一時的に楽になっているだけの場合もあります。
ここは、一般の方ほど間違えやすいところだと思います。
解熱剤は何を使えばいい?
成人では、
- アセトアミノフェン
- イブプロフェン
- ロキソプロフェン
などが使われることがあります。
ただし、
- 年齢
- 持病
- 胃腸の状態
- 腎機能
- 他の薬との組み合わせ
などによって、向き不向きがあります。
特に小児のインフルエンザでは注意が必要です。
日本小児科学会では、小児の解熱鎮痛薬としてアセトアミノフェンが第一選択とされています。インフルエンザなどのウイルス感染時には、アスピリンや一部のNSAIDsに注意が必要です。
子どもへ大人用の解熱鎮痛薬を自己判断で使うのは避けましょう。
また、IBDなど消化管の持病がある方は、NSAIDsの使用について主治医や薬剤師へ確認しておくと安心です。
では、なぜ熱が出ると関節や筋肉まで痛くなるの?
ここも、少しだけ身体の中を見てみましょう。
感染が起こると、
免疫細胞からさまざまなサイトカインが放出されます。
サイトカインは、
免疫細胞へ情報を伝えたり炎症反応を調節したり身体の防御反応を進めたりする重要な物質です。
IBD治療を受けている方には、
『TNFα』
などで聞き覚えがあるかもしれません。
サイトカインは、
「炎症を起こす悪者」
というだけの物質ではありません。
本来は免疫反応に欠かせないものです。
ただし、感染症などで炎症反応が強くなると、
サイトカインやプロスタグランジンなどの影響によって、痛みを感じる仕組みも敏感になります。
その結果、
- 関節が痛い
- 筋肉が痛い
- 全身がギシギシする
といった症状が出ることがあります。
ありていに言えば、
『身体全体が「炎症モード」に入って、痛みのセンサーも敏感になっている』
ようなイメージです。
ですから、特にインフルエンザのように全身症状が強く出やすい感染症では、発熱と一緒に、
- 関節痛
- 筋肉痛
- 頭痛
- 強いだるさ
が出やすくなります。
関節痛・筋肉痛がつらいときはどうする?
まず基本は、
- 休息
- 水分補給
- 必要に応じた解熱鎮痛薬
です。
ようするに、感染症そのものを治すための行動が基本、ですね。
感染症による全身の痛みは、
- 筋肉そのものを痛めた
- 関節を壊した
という痛みとは少し違います。ココ大事です。
身体の炎症反応に伴って起こっている痛みです。
そのため、まず身体を休ませることが大切です。
解熱鎮痛薬
発熱と関節痛、筋肉痛が一緒に出ている場合には、解熱鎮痛薬によって、
熱だけでなく
- 頭痛
- 関節痛
- 筋肉痛
も楽になることがあります。
ただし、
「効かないから追加する」
「早く効かせたいから倍量飲む」
ということはしないようにしましょう。
用法・用量は守ります。
持病や他の薬がある場合には、医師や薬剤師へ相談しましょう。
マッサージやストレッチは?
これは治療というより、
『自分が少し楽になるための工夫』
くらいに考えるとよいと思います。
発熱して身体がこわばっていると、
- 軽く身体を伸ばす
- 肩や腰を少し動かす
- 軽くマッサージする
ことで、
「少し楽になった」
と感じることはあります。
ただし、しんどいときに無理をしてストレッチする必要はありません。
強く揉んだり、痛いのを我慢して伸ばしたりする必要もありません。
自分が気持ちいいと感じる範囲で十分です。
湿布は使ってもいい?
これも同じです。
湿布を貼ったから、感染症による全身の炎症が治る、というわけではありません。
ただ、特に痛い場所へ貼ることで、
- 冷感
- 温感
- 鎮痛成分
などによって、少し楽になることはあります。
医療機関でも、痛みの程度や状態によって貼付薬が処方されることはあります。
ですから、
「治療の中心」
ではなく、
『つらさを和らげるための補助』
くらいに考えるとよいでしょう。
解熱剤と同じですが、これらが感染症を治す、というわけではありません。ここは間違えないようにしましょう。
また、貼付薬にもNSAIDsを含むものがあります。
持病や服薬がある方は、医師や薬剤師へ確認してください。
悪寒・高熱・関節痛だけで「インフルエンザ」とは決めない
悪寒。高熱。関節痛。筋肉痛。
この組み合わせは、確かにインフルエンザでよくみられます。
ですが、『この症状だから必ずインフルエンザ』とは限りません。
それだけで確定できたら検査の必要性もありません。
新型コロナウイルス感染症など、他の感染症でも似た症状が出ることがあります。
ですから検査が必要で、適した処方が必要になるわけですね。
また、
- 細菌感染
- 肺炎
- 腎盂腎炎
などでも、高熱や悪寒戦慄が起こることがあります。
特に、
- 高熱が続く
- 呼吸が苦しい
- 胸が痛い
- 意識がおかしい
- 水分が取れない
- 尿が極端に少ない
- 強い悪寒戦慄が続く
- 症状がどんどん悪化する
といった場合には、自己判断で様子を見続けず医療機関へ相談しましょう。
まとめ
悪寒は、単純に身体が冷えているから起こるものではありません。
感染や炎症によって脳の体温調節の設定が変わり、
「今の体温では低い」
と身体が判断することで、
- 寒く感じる
- 血管を縮める
- 筋肉を震わせる
といった反応が起こります。
その結果、体温が上がっていきます。
ありていに言えば、
『身体が一時的に設定温度を上げ、新しい温度まで身体を温めようとしている』
ようなものです。
また、感染症では、
- サイトカイン
- プロスタグランジン
など炎症に関わる物質の影響によって、
- 関節痛
- 筋肉痛
- 頭痛
- 全身倦怠感
なども起こります。
インフルエンザでは、こうした全身症状が比較的急速に現れることが特徴です。
発熱したからといって、
すぐに解熱剤を飲まなければならないわけではありません。
一方で、発熱は身体に必要だから絶対に我慢する、というものでもありません。
解熱剤は、感染症そのものを治す薬ではなく、
- 熱
- 頭痛
- 関節痛
- 筋肉痛
などのつらさを和らげるための薬です。
『熱が下がった=治った』
でもありません。
『早く飲んだ=早く治る』
でもありません。
症状のつらさに合わせて適切に使う。
これが大切です。
関節痛や筋肉痛も、基本は休息、水分、必要に応じた解熱鎮痛薬。
そのうえで、
- 軽いストレッチ
- マッサージ
- 湿布
など、
自分が少し楽になる方法を補助的に使う。
これくらいの考え方でよいと思います。
発熱や悪寒、関節痛は、身体が感染や炎症に反応しているときに起こる、ごく身近な症状です。
ただ、
「よくある症状だから大丈夫」
と決めつけるのも違います。
いつもと違う。
症状が強い。
長く続く。
そう感じたときには、きちんと医療へつなぐ。
仕組みを知っておくことは、必要以上に怖がらないためにも、逆に危険な状態を見逃さないためにも、役立つと思います。
参考:
この記事では、インフルエンザに伴う発熱、関節痛、筋肉痛などの症状について、厚生労働省のインフルエンザ情報を参考にしています。
また、小児のインフルエンザにおける解熱鎮痛薬については、日本小児科学会の情報を参考にしています。
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