潰瘍性大腸炎の治療・内科治療⑥経口α4インテグリン阻害剤とスフィンゴシン1リン酸(S1P)受容体調節剤について
潰瘍性大腸炎の治療薬も、ここ数年でだいぶ選択肢が増えてきましたね。
昔からよく知られている5-ASA製剤、ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤、JAK阻害薬に加えて、近年は少し作用の仕方が異なる新しい飲み薬も登場しています。
その中で、今回触れておきたいのが、『経口α4インテグリン阻害剤』
と、『スフィンゴシン1リン酸(S1P)受容体調節剤』(ちょっと長くて覚えにくい)です。
このあたりは、潰瘍性大腸炎の治療薬一覧を見ていると名前は出てくるのですが、実際に使っている人の体験談がそこまで多くなく、私自身も潰瘍性大腸炎ではないため、あまり詳しく語れる立場ではありません。
なので今回は、体験談ではなく、基本情報をざっくり整理する形でまとめておきます。
経口α4インテグリン阻害剤とは?
『経口α4インテグリン阻害剤』は、炎症に関わる白血球が大腸の粘膜へ集まりにくくなるようにして、炎症を抑えることを目指す飲み薬です。
ざっくりいうと、炎症を起こしに行く細胞が腸に集まる流れを抑えるタイプのお薬、というイメージですね。
潰瘍性大腸炎では、この系統の薬としてカログラがあります。
カログラ(一般名:カロテグラストメチル)
カログラは、5-アミノサリチル酸製剤による治療で効果不十分な中等症の潰瘍性大腸炎に用いられ、1回960mgを1日3回、食後に内服する薬です。また、電子添文上では維持療法のために投与しないとされており、進行性多巣性白質脳症(PML)などへの注意が必要とされています。
●カログラの特徴
カログラの特徴としてまず目に入るのは、注射ではなく飲み薬であることです。
生物学的製剤のように点滴や自己注射ではないので、「内服で使える選択肢」という点はひとつの特徴といえます。
一方で、1日3回の服用が必要であること、そして維持療法目的では使わないという位置づけは、他の治療薬と少し感覚が違うところかもしれません。
なんとなく、「飲み薬だから気軽そう」と思ってしまいがちですが、実際には適応も服用方法もきちんと決まっている薬です。
※基本情報からのきくらげの印象としては、α4インテグリンって生物学的製剤でも抑制するお薬ありますよね。内服でありながらこれを抑制できるって、すごい進歩だなって感じます。
他のターゲットに対しても今後内部クリーンがでてくるかはまったくわかりませんが、ちょっと期待しちゃいますよね。
スフィンゴシン1リン酸(S1P)受容体調節剤とは?
もうひとつが、『S1P受容体調節剤』です。
クローン病では馴染みのないお薬の名前や用語ですね。
これは、リンパ球が血液中へ出ていく流れを調節することで、結果として大腸の炎症部位へ集まる免疫細胞を減らし、炎症を抑えることを目指す飲み薬です。
こちらも、注射ではなく経口薬という点では共通していますが、作用のしかたはまた別です。
潰瘍性大腸炎では、この系統の薬として
- ゼポジア(一般名:オザニモド塩酸塩)
- ベルスピティ(一般名:エトラシモドL-アルギニン)
があります。
どちらも経口薬ですが、作用する受容体のタイプや、飲み始め方などに違いがあります。
ゼポジア(オザニモド塩酸塩)
ゼポジアは、S1P受容体を調節してリンパ球の移動を抑え、炎症をしずめることを目指す経口薬です。
潰瘍性大腸炎では、中等症から重症の患者さんに用いられ、1日1回の内服で使われます。特徴的なのは、いきなり通常量から始めるのではなく、少ない量から段階的に増やしていくところです。具体的には、1~4日目0.23mg、5~7日目0.46mg、8日目以降0.92mg という形で増量していきます。
この「少しずつ増やす」という導入のしかたは、初めて見るとちょっと独特に感じるかもしれません。
でも、こういうお薬は単に「飲み薬だから簡単」とは言い切れず、飲み始め方にもちゃんと意味があるんですね。
ベルスピティ(エトラシモドL-アルギニン)
ベルスピティも、同じくS1P受容体調節剤に分類される経口薬です。
作用機序の説明では、S1P1、4、5受容体に選択的に作用し、特にS1P1受容体の内在化を通じてリンパ球が血中へ出にくくなることで、大腸の炎症部位に集まる活性化リンパ球を減らすと考えられています。
潰瘍性大腸炎における詳細な作用機序は完全には明らかでないものの、炎症性サイトカイン産生の低下や粘膜炎症の軽減が期待される薬です。
ターゲットがS1P、4、5受容体と3つにアプローチする、というのがまたゼポジアとは違いますね。
ゼポジアとベルスピティは、どちらも「S1P受容体調節剤」という同じ枠に入りますが、細かい部分まですべて同じというわけではありません。
ですので、同じ系統だから完全に一緒と考えるのではなく、薬ごとに特徴があると見ておくのが自然だと思います。
どんなふうに理解すればいい?
この2系統は、どちらも潰瘍性大腸炎の治療選択肢のひとつですが、ざっくり整理するとこうなります。
経口α4インテグリン阻害剤
→ 炎症に関わる細胞が腸へ集まりにくくすることで炎症を抑えるタイプ
S1P受容体調節剤
→ リンパ球の移動を調節して、炎症部位へ集まる免疫細胞を減らすタイプ
どちらも「炎症を抑える」という最終目的は同じですが、そこに至る仕組みが少し違うわけですね。
潰瘍性大腸炎の治療薬は本当に多様化してきていて、単に「効く・効かない」だけでなく、どういう機序で炎症を抑えるのかを見ていくと、治療の幅が広がってきたことがわかります。
まとめ
潰瘍性大腸炎では、近年、従来の治療薬に加えて
・経口α4インテグリン阻害剤
・スフィンゴシン1リン酸(S1P)受容体調節剤
といった、新しいタイプの飲み薬も使われるようになってきました。
経口α4インテグリン阻害剤には カログラ、S1P受容体調節剤には ゼポジア と ベルスピティ があり、それぞれ炎症を抑えるための仕組みが異なります。
体験談が少ない薬は、どうしても書きにくさがあります。
でも、まずはこうして基本情報だけでも整理しておくことに意味はあると思っています。
実際に使ったことがない方でも、「こういう治療薬の系統があるんだな」と知っておくだけで、治療全体の見え方は少し変わってくるのではないでしょうか。
※お薬の参考元
IBDプラス、カログラ(KEGG医療用医薬品情報)、ゼポジア(患者さん向け公式)、ベルスピティ(患者さん向け情報)などの公開情報をもとに整理しています。
カテゴリー『潰瘍性大腸炎』はコチラ↓
サクッと潰瘍性大腸炎の症状・治療の概要を知りたい方はコチラ↓

コメント