過呼吸になると酸素が足りない?過換気の仕組み・症状・対処法を整理
突然、呼吸が速くなって止められない。
胸が苦しい。
手足や口のまわりがしびれる。
「息が吸えない」「酸素が足りない」と感じて、さらに必死に呼吸しようとしてしまう。
こうした状態の一つに「過換気症候群」があります。
一般には「過呼吸」と呼ばれることも多いですね。
過呼吸という言葉から、
「呼吸ができなくなって酸素が足りなくなる状態」
と思っている方もいるかもしれません。
しかし、過換気症候群では、必ずしも酸素不足そのものが問題になっているわけではありません。
むしろ、必要以上に呼吸をすることで二酸化炭素を吐き出しすぎ、血液中の二酸化炭素が減少することで、さまざまな症状が起こります。
そして過換気症候群では、
- 緊張
- 不安
- 恐怖
- 強いストレス
- パニック
などが重要な誘因になることがあります。
一方で、呼吸が速くなる原因はそれだけではありません。
発熱、痛み、心臓や肺の病気、低酸素状態、代謝異常など、身体的な原因でも呼吸は速くなります。
つまり、
「ストレスは関係する」
ことと、
「ストレスだけで決めつけてはいけない」
ことは、両立します。
今回は、
- ・過呼吸・過換気とは何か
- ・呼吸では酸素と二酸化炭素がどう関わっているのか
- ・なぜ息苦しいのに酸素不足とは限らないのか
- ・血液がアルカリ側へ傾くと何が起こるのか
- ・緊張やストレスとはどう関係するのか
- ・どんな人に起こりやすい傾向があるのか
- ・子どもや思春期ではどう考えるのか
- ・自律神経とはどう関係するのか
- ・迷走神経反射とは何が違うのか
- ・実際に起こったらどう対処するのか
- ・周囲の人はどう対応すればよいのか
- ・紙袋を使ってはいけないのはなぜか
- ・どのような場合に医療機関へ相談するべきか
を整理していきます。
※この記事は過換気症候群について理解するための一般的な情報整理です。息苦しさや呼吸の速さには、心臓・肺・感染症・代謝異常などさまざまな原因があります。症状が強い、初めて起きた、なかなか改善しない、いつもと様子が違う場合などは「過呼吸」と自己判断せず医療機関へ相談してください。
- 「過呼吸」と「過換気」はどう違う?
- 人間は「酸素だけ」を吸って生きているわけではない
- 血液は「弱いアルカリ性」に保たれている
- 過換気では二酸化炭素が減りすぎる
- 苦しいから呼吸する。でも、その呼吸がさらに症状を強くする
- 過呼吸ではどんな症状が起こる?
- 緊張やストレスは過換気症候群の重要な誘因
- 呼吸は「精神的に弱いから起こる」ものではない
- 過呼吸になりやすい傾向はある
- 子どもや思春期でも起こる
- 発達特性がある場合は?
- 過呼吸と自律神経
- 迷走神経反射とは似ているけれど別物
- 過呼吸になったらどうする?
- 周囲の人はどうすればいい?
- 紙袋を使う「ペーパーバッグ法」はやらない
- 「過呼吸だろう」と決めつけない
- 職場・学校・部活動では、対応をあらかじめ知っておく
- 何度も繰り返す場合は、一度きちんと原因を整理する
- 私が職場で経験した過呼吸
- まとめ
「過呼吸」と「過換気」はどう違う?
日常では「過呼吸」という言葉がよく使われます。
一般的には、
「呼吸が必要以上に速くなっている」
「息を何度も大きく吸っている」
ような状態をまとめて過呼吸と表現することが多いですね。
この過呼吸という用語そのものは、一般の俗称ではなく医療の現場でも用いられますので、誤った表現ではありません。
ですが、医療ではそこからさらに細かく切り分けます。
医学的には「過換気」という言葉があります。
換気とは、肺へ空気を取り込み、外へ出すことです。
過換気は、
『身体が必要としている量を超えて換気をしすぎている状態』
をいいます。
呼吸回数が増える場合もあれば、一回一回の呼吸が深くなる場合もあります。
そして過換気によって血液中の二酸化炭素が低下し、さまざまな症状が現れる状態が「過換気症候群」です。
こうして、過呼吸症状を診断のよって正しい病名に直してカルテには記載されます。
まぁ、このへんは別に知らなくても問題ありませんね、素人は診断じせんから。
一般向けには、
「必要以上に呼吸をしすぎて、その結果として身体に症状が出ている状態」
それが『過呼吸』を理解するイメージ、というくらいでよいと思います。
人間は「酸素だけ」を吸って生きているわけではない
過呼吸を理解するとき、とても大切なのがここです。
結構、一般に、人間に必要なのは酸素、という固定観念がありがちです。
しかし、実態は少し違います。
私たちは空気を吸うとき、
「酸素だけを身体へ取り込み、それ以外は全部そのまま吐き出している」
わけではありません。
大気には、おおよそ、
- 窒素:約78%
- 酸素:約21%
- 二酸化炭素:約0.04%
などが含まれています。
私たちはその空気をそのものをまず肺へ取り込みます。
そして、肺では酸素が血液へ入り、血液によって全身へ運ばれます。
細胞はその酸素を利用して、栄養素から生命活動に必要なエネルギーを作ります。
ここが大事。このエネルギーを作る過程で、二酸化炭素が生じます。
二酸化炭素は血液によって肺まで運ばれ、呼吸によって身体の外へ排出されます。
つまり呼吸では、
酸素を取り込むだけでなく、まず空気すべてを吸っていて、その中から吸ったものだけでなくエネルギー合成時に生まれた二酸化炭素も含めて、適切に排出する、ということをしています。
そして二酸化炭素は、
「身体にとって不要だから、できるだけ少ないほうがいい」
というものでもありません。ここがあまり知られていないポイントですね。
血液中の二酸化炭素は、血液の酸性・アルカリ性、つまりpHを調節するうえでも重要な役割を持っています。
血液は「弱いアルカリ性」に保たれている
血液が何性か、なんて、あんまり考えたことも聞いたことないかもしれません。
実は、人間の動脈血は通常、
『pH7.35〜7.45程度』
という、わずかにアルカリ性の非常に狭い範囲に保たれています。
ここで大切なのは、
「酸性は悪い」
「アルカリ性は良い」
という話ではありません。
人体では、
『一定の範囲から大きく外れないこと』
これがが重要になります。
血液のpHが酸性側へ大きく傾いても問題ですし、アルカリ側へ大きく傾いても問題です。
身体は、
- 呼吸
- 腎臓
- 血液中の緩衝系
などを使って、この狭い範囲を保っています。
その調節に関わっているものの一つが二酸化炭素、なのですね。
ですから、二酸化炭素はなんの仕事もしてなくて人体には要らないもの、というわけではないのです。
過換気では二酸化炭素が減りすぎる
さて、人体では二酸化炭素も弱いアルカリ性の血液を保つために重要な働きをしてる、ということはわかったかと思います。
では、過換気になると、どうなってしまうか。
過呼吸になりますと、
『必要以上に速く呼吸する』、あるいは、『必要以上に深く呼吸する』、ことで、二酸化炭素を通常より多く吐き出します。
すると、血液中の二酸化炭素が低下します。
二酸化炭素が低下すると、血液は『アルカリ側』へより傾きます。
これを、
「呼吸性アルカローシス」
といいます。
アルカリ側へ傾きすぎることで、
- 血管の収縮
- 電解質バランスの変化
- 神経や筋肉の興奮性の変化
などが起こり、
- めまい
- ふらつき
- 口のまわりのしびれ
- 手足のしびれ
- 手足のこわばり
- 動悸
- 胸部不快感
- 頭がぼんやりする感じ
- 意識が遠のくような感覚
などが現れることがあります。
つまり、
「呼吸が苦しいから酸素不足」
と単純に考えるのではなく、
過換気症候群では問題の中心は酸素不足ではなく、
「二酸化炭素が必要以上に低下していること」
なんですね。これが症状を生み出す大きな要因になっています。
息苦しくても、必ずしも酸欠とは限らない、これが過呼吸の症状の実態ですね。
苦しいから呼吸する。でも、その呼吸がさらに症状を強くする
過換気症候群でつらいところは、本人自身が、
「息が吸えない」
「もっと吸わないと危ない」
と感じやすいことにあります。
息が吸えなきゃ、当然そう感じますよね。体感としてはとても理解できます。
しかし、実際に身体に起きてることは違うのが過換気症候群です。足りてないのは酸素ではなく二酸化炭素、なんですね。
そのため、
苦しい
↓
もっと大きく呼吸する
↓
二酸化炭素がさらに減る
↓
しびれやめまいが強くなる
↓
「やっぱり何かおかしい」と不安が強くなる
↓
さらに呼吸が速くなる
という悪循環へ入りやすくなります。
そのため、過呼吸であることが確かと思われる場合、
「苦しいから、とにかく大きく深呼吸する」
という対応は、過換気症候群では逆効果になることがあります。
過呼吸ではどんな症状が起こる?
では症状のおさらいです。
過換気症候群では、
- 呼吸が速くなる
- 息苦しい
- 胸が苦しい
- 動悸
- めまい
- ふらつき
- 吐き気
- 口のまわりのしびれ
- 手足のしびれ
- 手足のこわばり
- 手指がつるように固まる
- 頭がぼんやりする
- 強い不安感
- 意識が遠のく感じ
など、さまざまな症状が現れます。
特徴的といえるのは、呼吸が浅く速いのはもちろんですが、めまいやふらつきなどだけでなく、しびれやこわばりがあること。
しびれやこわばりは過換気症候群でみられることがあり、一般にイメージされる『貧血』とは症状の出方が異なる場合があります。
いずれも、本人にとっては非常に強い症状です。
とくに初めての場合、
「このまま呼吸できなくなるのでは」
「死んでしまうのでは」
と思うほど怖く感じることもあります。
この恐怖や不安が、さらに呼吸を速くすることもあります。
※きくらげも、もちろん人ですから、経験はあります。子どもの頃はしばしばありました。今ではまったくありませんが。
記憶には、とにかく苦しい、朦朧とする、身体中がこわばり筋肉が痛い、貧血とは明らかに違うという体感、が残ってます。
ここに違いを知識として知っているだけでも、対応の仕方も変わると思いますので、参考にしてみてください。
※ちなみに、薬の副作用で完全に呼吸が止まった経験もありますが、似た感じはしました。
最初は、自分の呼吸が止まっていると気付きませんでした。
顔が熱くなり、心臓がドキドキする、深呼吸してみようと思ったら、吸えない、そして吐けない、ここで呼吸してないことに気付きました。
もちろん、過呼吸とは違います。止まってることによる酸欠ですので、そこは別物です。
ただ、そのときの身体のこわばり、筋肉の痛み、意識の朦朧、は同じような感触でした。
これらは、酸素不足や二酸化炭素の変化など、呼吸に関わる血液ガスの異常では、身体にさまざまな症状が現れるんだな、という程度の私個人の体感として捉えてください。
緊張やストレスは過換気症候群の重要な誘因
過呼吸、というと、一般ではストレスを原因として連想する方が多いかなと思います。昔から一般ではそう言われていますね。
確かに、過換気症候群では、
- 緊張
- 不安
- 恐怖
- パニック
- 強い精神的ストレス
が代表的な誘因として知られています。
シチュエーションでいえば、たとえば、
- 初めての職場
- 試験
- 面接
- 人前での発表
- 大会
- 部活動
- 強い叱責
- 事故
- 恐怖体験
- 人間関係の強いストレス
などです。
こうした場面で強い緊張が起こると、
- 心拍数が上がる
- 筋肉が緊張する
- 汗が出る
- 呼吸が速くなる
といった身体反応が起こります。
過呼吸とまでいかなくとも、こうした緊張から身体にちょっとした異変が起きることは、誰しも経験があるかと思います。
その中でも、呼吸が必要以上に速く、あるいは深くなると、過換気へつながることがあります。
ですから、
「過呼吸とストレスは関係がある」
これは押さえておいてよいところです。
しかし、注意が必要です。
「呼吸が速い=ストレスが原因」
と一律に決めつけることはできません。
- 発熱
- 強い痛み
- 喘息
- 肺の病気
- 心臓の病気
- 感染症
- 低酸素状態
- 代謝異常
- 薬剤
などによっても呼吸は速くなります。
ストレスは大切な誘因の一つ。
しかし、それだけですべてを説明しない。
この切り分けが大切です。
呼吸は「精神的に弱いから起こる」ものではない
ストレスが誘因になると聞くと、
「気が弱い人がなる」
「精神的に弱いから起こる」
と考えてしまうことがあります。実際、一般ではこうした極論を耳にすることがしばしばあるかと思います。
確かに、角度によってはまるですべてが間違いということないです。
たとえば、初めてのときは緊張してドキドキしたことでも、慣れれば平気になる、なんてことは誰もが経験あるかと思います。
ある程度のことは、経験の積み重ねによって変化する部分もあります。
しかし、そもそも緊張への身体反応にはかなり個人差があります。
端的にいってしまえば、向き不向き、得意不得意、そうしたイメージだとわかりますいかもしれません。
このあたりは迷走神経反射の記事でも細かくお話してますね。
同じ緊張を感じても、
- お腹が痛くなる人
- 汗が大量に出る人
- 手が震える人
- 心拍数が強く上がる人
- 呼吸が速くなる人
など、反応の出方は違います。
過換気症候群も、その一つです。
緊張によって、めまいや立ちくらみなど失神前症状が出る人もいれば、過呼吸のような症状がでてしまう人まいます。
これらは本人が意識して起こしているわけでもありません。
どんな反射が起きるかは、わからないし、決め付けれることでもありません。
そのため、
「根性がない」
「もっと落ち着けばいい」
「気にしすぎ」
という精神論だけで片づけるものではありません。
経験を積むことで緊張への対処がしやすくなることはありますが、それだけで身体反応を完全に防げるとは限りません。
精神論だけで片付けていい単純なことではありません。
過呼吸になりやすい傾向はある
精神論だけ片付けていいことではありませんが、一方で、過呼吸になりやすい傾向というものは、確かにあります。あくまでも傾向であり、必ずしもそうだということではありません。
過換気症候群では、
- 緊張しやすい
- 不安を感じやすい
- 心配事を抱え込みやすい
- ストレスが長く続いている
- パニックになりやすい
といった人が起こりやすい傾向がみられるといわれています。
これは、
「この性格なら必ず過呼吸になる」
という意味ではありません。
ただ、
『自分はどのような状況で身体反応が起こりやすいのか』
つまり、自分の身体と環境の相性ともいえますね。自分の身体の苦手分野。
これを知っておくことは大切ですし、意味のあることだと思います。
それによって、ある程度の予防や備え、起きたときの対処も見えてきます。
たとえば、
- 試験前に起こりやすい
- 人前で話すときに起こりやすい
- 睡眠不足が重なると出やすい
- 忙しい時期に増える
- 強い不安を感じたあとに起こる
など、自分なりのパターンが見つけていくことも自分でできる範疇としては望ましですね。
また、セルフチェックなども、
『自分の傾向を振り返る材料』
として利用するのであれば、一つの方法です。
ただし、
『セルフチェック=診断』
ではありません。このは勘違いしないようにしましょう。
何度も繰り返す場合や症状が強い場合には、医療機関で相談することが大切です。
子どもや思春期でも起こる
過換気症候群は、大人だけのものではありません。
子どもや思春期にもみられます。
この時期は、
- 学校
- 勉強
- 友人関係
- 部活動
- 試験
- 進学
- 環境の変化
など、多くのストレスがあります。
また、成長途中では、
- 自分の身体に何が起きているのかをうまく説明できない
- 強い不安をどう処理したらよいかわからない
- 緊張したときに自分を落ち着かせる方法がまだ十分に身についていない
といったこともあります。
つまり、先ほどの経験による耐性、ですね。これが年齢的にまだ不十分な側面もあります。
そのため、大人よりもパニックになりやすい場面もあります。
これは、端的に言ってしまえば
「精神的に未熟」
となりがちですが、その整理はいささか乱暴と思います。
成長期の場合であっても、過呼吸が起きるのは
「精神的に未熟だからダメ」
なんてという極端な意味や解釈は望ましくありません。
まだ成長途中のライフステージだからこそ、周囲が身体反応として理解して支えることが大切です。
弱いと否定するよりも、周りの大人として今すべきことがあるはずです。
過呼吸症状が落ち着いたあと、「心を鍛えなさい」、のような言葉をかけることは傷を植え付けかねませんので、要注意です。
あまりきつく言いたくはありませんが、実際、この現代でもこうした精神論を見聞きしますので、危険性を私は感じています。
また一方で、
子どもの呼吸困難を何でも「過呼吸」と決めつけてはいけません。
ここも大切です。
- 症状が強い
- なかなか改善しない
- 何度も繰り返す
- 普段と様子が違う
- 発熱や胸痛など他の症状がある
場合には、小児科などへ相談しましょう。
なにか別の問題が潜んでいる可能性もあります。
何事も素人判断で決め付けるのは望ましくありません。
発達特性がある場合は?
しばしば、発達障害を持つ場合は過呼吸になりやすい、という話も見聞きするかと思います。
一般の方よりもパニックを起こしやすい傾向にある障害の場合、確かにそういう側面はあるかと思います。
実際、ADHDなどの発達特性と、自律神経や覚醒調節については研究されています。
発達特性のある人の中には、
- 不安が強い
- 刺激に敏感
- 環境変化が負担になりやすい
- 緊張状態が続きやすい
- パニックになりやすい
など、その人なりの特性を持っている場合があります。
こうした特性が、過換気を起こす誘因と重なることはあります。
ただし、たとえば
「ADHDだから過呼吸になる」
という単純な話ではありません。
発達障害のある人すべてが過呼吸を起こしやすいわけでもありません。
大切なのは、
発達障害が直ちに過呼吸を引き起こしやすい、ではなく、発達障害の方の特性が、過呼吸の誘因因子が重なりやすい傾向があるという理解と、
『自分にはどのような身体反応が起こりやすいのか』
これを把握しておくことが大切です。
もし何度も過呼吸を起こすのであれば、
- どんな場面で起こるのか
- どんな前兆があるのか
- 何をすると落ち着きやすいのか
を医師と相談しながら整理し、自分に合った対処方法を考えておくと安心です。
※きくらげの身内にもADDの方がおり、確定診断前の治療をしてない段階では、確かに過呼吸を繰り返していました。
しかし、ADD治療を進め、自分がどういうときに起こりやすいか知り、対策対応ができるようになるにつれて、不安定になりやすい特性が軽減したことで結果的に頻度は減り、現在では数年に渡って過呼吸は起きていません。ただし、絶対起きないなんてことではないです。
あくまでもきくらげの身内のケースではありますが、直結、決め付け、そして対処のしようがない、というのは誤りであると、一側面からは言えるかと思います。
過呼吸と自律神経
強い緊張や不安を感じると、身体はその刺激へ対応しようとします。
- 心拍数が上がる。
- 汗が出る。
- 筋肉が緊張する。
- 呼吸が速くなる。
こうした反応には、自律神経も関わっています。
ですから、過換気症候群と自律神経は無関係ではありません。
ただし、
「過呼吸=自律神経が乱れた」
だけで終わらせると、肝心な仕組みが見えなくなります。
分解してみますと、過換気症候群では、
緊張や不安
↓
呼吸が速くなる
↓
必要以上に二酸化炭素を吐き出す
↓
血液中の二酸化炭素が低下する
↓
血液がアルカリ側へ傾く
↓
めまい・しびれ・息苦しさなどが起こる
↓
さらに不安になる
↓
もっと呼吸が速くなる
という流れがあります。
こうして分解してみますと、自律神経が最初から直接的に過呼吸を引き起こしているとは限らないことが見えてくるかと思います。
つまり、
過程で影響を与えている、という見方がイメージとしては一番近いかと思います。
自律神経は背景に関わる。けれども直接的とは限らない。
実際の症状には、過換気による二酸化炭素低下が大きく関わる。
両方を理解しておくことが大切です。
▶自律神経について詳しくはこちら
【自律神経とは?交感神経・副交感神経の仕組みと体調への関わりを整理】
迷走神経反射とは似ているけれど別物
ここも混同しがちな点ですね。
過呼吸では、
- めまい
- ふらつき
- 吐き気
- 意識が遠のく感じ
などが起こるため、迷走神経反射と似て見えることがあります。
しかし、仕組みも症状も、厳密には違います。
過換気症候群では、
過剰な呼吸
↓
二酸化炭素低下
↓
呼吸性アルカローシス
↓
めまい・しびれ・筋肉のこわばりなど
が中心です。
一方、迷走神経反射では、
- 痛み
- 恐怖
- 採血
- 長時間の立位
などをきっかけとして自律神経反射が起こり、血圧や心拍数が低下することで失神前症状や失神が起こります。
キッカケ→自律神経の反射、血圧降下など、という順番ですね。
過程に自律神経が関わってるいることは確かですが、二酸化炭素低下と血圧降下という部分だけ切り取ってみても、違いがわかるかと思います。
しびれや手足のこわばりなど、過換気で比較的みられやすい症状もあります。この点も迷走神経反射とは少し違う部分ではあります。
ただし、症状だけで両者を確実に区別できるわけではありません。ここはいずれも変わりません。
一見、症状の見た目が似ていても、身体の中で起きていることは違います。
▶迷走神経反射について詳しくはこちら
【迷走神経反射とは?採血・緊張・立ちっぱなしで気分が悪くなる仕組みと対処】
過呼吸になったらどうする?
では、実際に過呼吸になったらとうするのが適切か、整理していきます。
実際に過呼吸が起こったとき、
まず一番大切なのは、
「もっと大きく吸わなきゃ」
と頑張りすぎないことです。
過換気症候群では、すでに必要以上に呼吸している状態だからです。
まず、
- 静かな場所へ移動する
- 座る、または安全な姿勢を取る
- 転倒しそうなら無理に立たない
- きつい衣服があれば少しゆるめる
- 人だかりや大きな音など、刺激を減らす
こうしてリラックスできるようにします。
そのうえで、
「大きく吸う」
ことより、
「ゆっくり吐く」
ことを意識します。
イメージとしては、
軽く吸う
↓
急いで次の呼吸をしない
↓
「ふーっ」と細く長く吐く
↓
少し間を置く
↓
また自然に吸う
という感じです。
可能であれば、息を吐く時間を5秒程度、あるいはそれ以上ゆっくり取るくらいを意識するとよいでしょう。
ただし、
「絶対に5秒」
「3秒吸って5秒吐く」
と厳密に決める必要はありません。
呼吸法そのものがプレッシャーになってしまっては逆効果です。
覚えておくことは、
「ゆっくり、小さく、吐くほうを長めに」
くらいで十分です。
周囲の人はどうすればいい?
ここも大切。
過呼吸が起こった人を見ると、周囲もかなり慌てます。
- 呼吸が速い。
- 胸を押さえている。
- 手足がしびれている。
- 本人が「息ができない」と訴えている。
そんな状態を見ると、慌てるのは理解できます。
「大丈夫!?」
「救急車呼ぶ!?」
「もっと深呼吸して!」
と周囲もパニックになりがちですね。
でも、本人はすでに強い不安の中にいます。
そんな中で、
- 大勢で囲み、
- 大きな声で、
- 「大丈夫!?」
- 「しっかりして!」
と何人も話しかけると、
本人は、
「自分はそんなに危ない状態なのか」
とさらに不安になることがあります。
そのため、
- 一人か二人が対応する
- 人だかりを作らない
- 静かな場所へ移す
- 落ち着いた声で話しかける
ことが大切です。
たとえば、
「ここにいるから大丈夫」
「急いで大きく吸わなくていいよ」
「ゆっくり吐いてみよう」
「座って休もう」
くらいの短い言葉で十分です。
可能であれば、一緒にゆっくりと呼吸をして、エスコートして整えてあげれたら望ましいです。
望ましくないのは、原因をその場で問い詰めたり、
「なにしたの!?」
「ご飯ちゃんと食べた?」
「いつからそうなの!?」
「いいから落ち着いて!」
と強く声をかけたり質問したり、場合によってほ責めるような言葉をかけてしまうと、状況を悪化かせかねませんので、注意が必要です。
紙袋を使う「ペーパーバッグ法」はやらない
昔は、『紙袋を口元へ当てて、自分が吐いた空気を再び吸う』という方法が過呼吸の応急処置として知られていました。
吐いた息には二酸化炭素が多く含まれるため、
「減りすぎた二酸化炭素を戻せるのではないか」
という考え方です。
しかし現在は、自己判断でペーパーバッグ法を行うことは推奨されていません。
理由の一つは、
『酸素が不足する危険があること』
そしてもう一つは、
『その息苦しさが本当に過換気症候群なのかわからないこと』
です。
もし、
- 喘息
- 肺炎
- 心臓病
- 肺血栓塞栓症
- その他の低酸素を起こす病気
などだった場合、吐いた空気を繰り返し吸わせることは危険になる可能性があります。
ですから、
「過呼吸っぽいから紙袋」
という対応は行わないようにしましょう。
「過呼吸だろう」と決めつけない
過換気症候群は比較的よく知られています。
しかし、『呼吸が速い=過換気症候群』とほ限りません。
とくに、
- 初めて起きた
- 胸の強い痛みがある
- 呼びかけへの反応がおかしい
- 意識がもうろうとしている
- 顔色や唇の色が明らかに悪い
- 呼吸が苦しく会話できない
- 高熱がある
- 喘息や心臓病などの持病がある
- 運動中に突然起きた
- 休んでも改善しない
といった場合には、単なる過呼吸だと思い込まず、医療へつなぐことが大切です。
必要であれば救急要請も考えます。
また、
以前に過換気症候群を起こしたことがある人でも、
「前も過呼吸だったから今回も同じ」
と決めつけないようにしましょう。
繰り返すようなら、医師による適切な診断と処方、これが最も望ましいです。
職場・学校・部活動では、対応をあらかじめ知っておく
養護教諭のいる学校でしたらまだ安心材料にはなりますが、職場などでは知っておく必要があるかと思います。
過呼吸は、
- 職場
- 学校
- 部活動
- スポーツ
- 試験
- 会議
- 面接
- 発表
- 舞台
など、強い緊張が生じるさまざまな場面で起こります。
そして実際には、本人の症状だけでなく、周囲の人がどう対応すればよいかわからず、みんなで慌ててしまう。
そうなりがちです。
だからこそ、過呼吸が起きたら、
- 静かな場所へ移す
- 一人か二人が付き添う
- 安全な姿勢を取る
- ゆっくり呼吸を促す
- 人だかりを作らない
- 様子がおかしければ医療へ
くらいは知っておいて損はありません。一般の家庭の医学範疇の知識の底上げですね。
もし過呼吸を繰り返す人であれば、
- どんな前兆があるのか
- どうすると落ち着きやすいのか
- いつ家族や医療機関へ連絡するのか
こうしたことを、あらかじめ本人・家族・医療者などで共有しておくと安心です。
発作が起きてから全員で考えるより、
起こる可能性があるなら先に対応を決めておく。
そのほうが本人にとっても周囲にとっても安心です。
何度も繰り返す場合は、一度きちんと原因を整理する
当たり前のことですが一番重要です。
過換気発作を何度も繰り返す場合、
「呼吸法を覚えれば終わり」
とは限りません。
何が誘因になっているのかを整理することも大切です。
たとえば、
- 強い緊張
- 慢性的なストレス
- 睡眠不足
- パニック障害
- 不安症
- 生活環境
- 身体的な病気
などがあります。
精神的な負担が背景にある場合には、心療内科や精神科などでの治療が役立つ場合もあります。
一方で、
「過呼吸を繰り返す=精神疾患」
と決めつけることも望ましくありません。
まず原因を確認する。そして、自分はどんな場面で起こりやすいのか。どんな前兆があるのか。どうすると落ち着きやすいのか。
これらを整理していく。
そして、必要に応じて医師と相談しながら、自分に合った対処方法を作っていくことが大切です。
私が職場で経験した過呼吸
この記事を書こうと思ったきっかけの一つに、職場での出来事があります。
初出勤だった高校生のアルバイトさんが、一通り仕事の説明を受けたあと、社員さんと一緒にレジへ立ったところで突然呼吸が速くなり、強い息苦しさを訴えました。
その日はかなり緊張していたようで、前夜もあまり眠れていなかったそうです。
初めての職場。
知らない人ばかりの環境。
仕事を覚えなければならない緊張。
睡眠不足。
こうした負担が重なっていたのだと思います。
もちろん、その場の情報だけで原因を医学的に断定することはできません。
ただ、緊張やストレスが過換気の誘因になることを考えると、十分に考えられる状況ではありました。
事務所へ移動して座ってもらい、周囲で落ち着いて声をかけ、少し気持ちが落ち着いてきたところで息をゆっくり細く長く吐く呼吸を一緒にやりながら休んでもらったところ、次第に呼吸も落ち着いていきました。
幸い大きな問題にはならず、その日は帰宅してもらいました。
本人にとっては、本当に息ができなくなるように感じる、とても怖い経験だったと思います。
そして周囲にいた人たちも、
「どうすればいいの?」
とかなり慌てていました。
過呼吸は、本人だけでなく周囲もパニックになりやすい症状です。
私のような人間がたまたまその場にいたことは不幸中の幸いだったこもしれません。
だからこそ、
- どういう仕組みで起きるのか
- 起きたとき何をすればよいのか
- どんな場合は医療へつなぐのか
基本的なことを知っておく意味は大きいと思います。
一人でも多く知れれば、それだけ対応もスマートになります。
なにより、危険な状態を見逃さず、必要なときに医療へつなげられる可能性も高まります。
まとめ
過換気症候群では、
必要以上に呼吸をすることで二酸化炭素を吐き出しすぎ、血液中の二酸化炭素が低下します。
その結果、血液がアルカリ側へ傾き、
- めまい
- しびれ
- 動悸
- 胸部不快感
- 手足のこわばり
など、さまざまな症状が起こります。
本人は、
「酸素が足りない」
と強く感じることがあります。
しかし、過換気症候群では必ずしも酸素不足そのものが問題なのではありません。
むしろ、
苦しい
↓
もっと呼吸する
↓
二酸化炭素がさらに減る
↓
もっと苦しくなる
という悪循環を止めることが大切です。
そして、
不安、緊張、恐怖、強いストレスは、過換気症候群の重要な誘因です。
ここは無関係ではありません。
一方で、呼吸が速くなる原因はストレスだけではありません。
身体的な病気でも起こります。
だからこそ、
関連があるものは関連があるものとして理解する。
でも、それだけで原因を決めつけない。
この二つを一緒に持っておくことが大切です。
発作が起きたら、
- 安全な姿勢を取る。
- 周囲の刺激を減らす。
- 大きく何度も深呼吸しない。
- ゆっくり、小さく呼吸する。
- とくに吐く息を長めにする。
- 周囲は人だかりを作らず、落ち着いて声をかける。
そして、
紙袋を使ったペーパーバッグ法は行わない。
症状が強い、改善しない、初めての発作、いつもと様子が違う場合には、「過呼吸だろう」と自己判断せず医療へつなぐ。
過呼吸は、
「メンタルが弱いから起こるもの」
でも、
「全部自律神経のせい」
でもありません。
ストレス、自律神経、呼吸、身体の反応は、それぞれ無関係でなくとも、一律に原因がそうであるとはいえません。
健康のことを考えるとき、全部を一つの原因へまとめてしまうのではなく、「どこがどうつながっているのか」を一つずつ理解していく。
こらがなにより大切です。
過呼吸についても、その見方を持っておくと、いざ自分や周囲の人に起こったとき、少し落ち着いて対応しやすくなるのではないかと思います。
参考:
この記事では、過換気症候群の仕組み、症状、発作時の対応、ペーパーバッグ法の注意点について、一般社団法人 日本呼吸器学会の解説を参考に整理しています。
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