自律神経とは?交感神経・副交感神経の仕組みと体調への関わりを整理
「自律神経が乱れているのかもしれませんね」
体調が悪いとき、こんな言葉を聞いたことはありませんか?
眠れない。
動悸がする。
汗をかく。
胃腸の調子が悪い。
立ちくらみがする。
身体がだるい。
こうした非常に幅広い症状の説明に、「自律神経」という言葉が使われることがあります。
でも、自律神経って結局なんなのでしょう?
交感神経と副交感神経があって、昼は交感神経、夜は副交感神経。
「アクセルとブレーキのようなもの」
そんな説明を聞いたことがある方も多いと思います。
これは大まかなイメージとしては便利なのですが、実際の身体はもう少し複雑です。
自律神経は、心臓、血管、消化管、発汗、排尿、体温調節など、自分でいちいち意識しなくても身体を維持するために働き続けている神経のシステムです。
今回は、
自律神経とは何なのか
交感神経と副交感神経は何をしているのか
なぜ二つ必要なのか
睡眠・ストレス・胃腸・体温・血圧とどう関係するのか
「自律神経が乱れる」とはどういうことなのか
を、細かくなりすぎない範囲で全体から整理してみたいと思います。
※この記事は、自律神経について理解するための一般的な情報整理です。自律神経に関連するような症状でも、実際には心臓、内分泌、神経、消化器、感染症、薬剤など別の原因が隠れていることがあります。「自律神経のせい」と自己判断せず、症状が続く場合や強い場合は医療機関へ相談してください。
- そもそも神経って何?
- 自律神経の目的は「身体を一定に保つこと」
- 交感神経と副交感神経
- 交感神経は「活動や緊急事態に対応する側」
- 副交感神経は「休息・回復・消化に向く側」
- 「交感神経優位」「副交感神経優位」は、片方が止まっているという意味ではない
- 「アクセルとブレーキ」という例えにも限界がある
- 「どっちが強いか」より「必要な調整ができているか」
- 「昼は交感神経、夜は副交感神経」だけではない
- 自律神経は身体のどこに関係している?
- 自律神経と血圧
- 自律神経と胃腸
- 脳と腸は双方向につながっている――脳腸相関
- 自律神経と体温調節
- 自律神経と睡眠
- 自律神経とストレス
- では「自律神経が乱れる」って何?
- 「副交感神経を上げれば健康」でもない
- 「自律神経を整える」という言葉も少し慎重に
- 自律神経は自分で直接操作できない。でも間接的には影響を与えられる
- 自律神経失調症という言葉について
- 自律神経の不調は、一本線ではなく「絡み合い」で考える
- 迷走神経反射も自律神経の一例
- 過呼吸でも自律神経が登場する
- 「全部、自律神経のせい」にしない
- 自律神経の症状は何科へ行けばいい?
- 日常生活でできること
- 自律神経は「身体の自動調整システム」
- まとめ
そもそも神経って何?
まず、自律神経の前に「神経」そのものをざっくり整理します。
私たちの身体には、
- 脳
- 脊髄
- そこから全身へ伸びる神経
があります。
大きく分けると、
『脳と脊髄=中枢神経系』
その外側へ伸びて身体の各部と情報をやり取りするものが、
『末梢神経系』
です。
末梢神経はさらに、働き方によって大きく分けられます。
一つは、
『体性神経系』
です。
たとえば、
- 手を動かす
- 歩く
- 熱いものに触れたと感じる
- 痛みを感じる
など、自分の意思による運動や感覚に関わります。
もう一つが、
『自律神経系』
です。
こちらは、
- 心臓をどのくらいの速さで動かすか
- 血管をどの程度収縮させるか
- 胃腸をどう動かすか
- 汗をどの程度出すか
- 膀胱をどう調節するか
といったことを、基本的には私たちが意識しなくても調整しています。
考えてみれば当然ですよね。
「今から心拍数を70回くらいにしよう」
「食べ物が入ったから胃腸を動かそう」
「暑くなったから皮膚の血流を変えて汗を出そう」
なんて、一日中自分で指示していたら生活できません。
そういう身体の自動運転部分を担っているのが、自律神経です。
自律神経の目的は「身体を一定に保つこと」
自律神経を理解するとき、まず知っておきたい言葉があります。
『恒常性(ホメオスタシス)』
です。
人間の身体は、外の環境が変化しても、身体の内部をある程度安定した状態に保とうとしています。
たとえば、
- 暑くなれば汗をかく
- 寒くなれば熱を逃がしにくくする
- 立ち上がれば血圧が下がりすぎないよう調整する
- 食事をすれば消化管を動かす
- 運動すれば心拍数を上げる
などです。
身体は、常に同じ状態でいるわけではありません。
むしろ、
『外側の変化に合わせて中身を細かく変化させることで、全体として安定させています。』
ここが自律神経を考えるうえで大切なところです。
交感神経と副交感神経
自律神経系には、大きく、
・交感神経
・副交感神経
があります。
よく、
交感神経=アクセル
副交感神経=ブレーキ
と例えられます。
これは初心者向けのイメージとしては、とてもわかりやすいです。
ただし、本当に
「片方が身体を動かし、片方が止める」
だけではありません。
もう少し正確に言えば、
『そのとき身体に必要な状態へ調節するために、それぞれ異なる方向から臓器へ働きかけている』
と考えるほうが近いでしょう。
どちらか一方だけに切替わってるわけではなく、状況に合わせて優位な状態が変わる、この優位性の部分が誤解しやすいポイントなので、後述します。
交感神経は「活動や緊急事態に対応する側」
『交感神経』は、身体を活動に適した状態へ持っていくときに働きます。
たとえば、
- 運動している
- 仕事に集中している
- 緊張している
- 怖いものを見た
- 急いでいる
- 危険を感じた
といった場面です。
交感神経の活動が高まると、代表的には、
- 心拍数が増える
- 心臓の収縮力が高まる
- 血圧を維持・上昇させる方向へ働く
- 瞳孔が広がる
- 発汗が増える
- 消化管の働きは抑えられる方向へ働く
などの変化が起こります。
つまり、
「今は休んでいる場合ではない。動ける身体にしておこう」
という方向ですね。
昔から「闘争・逃走反応」と説明されることもあります。
危険なものと戦う。
あるいは逃げる。
どちらにしても、すぐ身体を動かせる状態にする必要があります。
副交感神経は「休息・回復・消化に向く側」
一方、『副交感神経』は、
- 休んでいる
- 食事をしている
- 眠る準備をしている
- リラックスしている
ときなどに働きやすくなります。代表的には、
- 心拍数を下げる方向へ働く
- 消化液の分泌を促す
- 消化管の運動を促す
- 排尿を促す方向へ働く
などがあります。
つまり、
「今は身体を激しく動かすより、食べたものを消化したり、休息したり、身体を整えたりする時間」
という方向ですね。
「交感神経優位」「副交感神経優位」は、片方が止まっているという意味ではない
さて、ここがとても誤解されやすいところです。
よく、
・交感神経優位
・副交感神経優位
という言い方をします。この「優位」という言葉を見ると、
交感神経優位
→ 交感神経100、副交感神経0
副交感神経優位
→ 副交感神経100、交感神経0
のように、どちらか片方だけが働いている状態を想像してしまうかもしれません。
でも、実際にはそうではありません。
交感神経も副交感神経も、基本的にはどちらも働いています。
そのうえで、その時々の身体の状態や臓器によって、
「今はこちらの働きが相対的に強い」
という状態になるため、
・交感神経優位
・副交感神経優位
と表現します。
たとえばイメージとして、
交感神経60・副交感神経40
あるいは、
交感神経70・副交感神経30
のように考えるとわかりやすいかもしれません。
もちろん、これは実際の自律神経活動をそのまま数字で表せるという意味ではありません。
あくまで、
『片方が100になって、もう片方が0になるわけではない』
ということを理解するためのイメージです。
「アクセルとブレーキ」という例えにも限界がある
ここで、もう一度「アクセルとブレーキ」の例えを考えてみます。
交感神経=アクセル
副交感神経=ブレーキ
という説明は、とても覚えやすいですよね。
ただ、この例えには少し無理があります。
車では通常、
アクセルを踏む
↓
車が加速する
ブレーキを踏む
↓
車が減速する
と、かなり単純です。
一方、自律神経は、
アクセルだけ踏んでブレーキを完全に離す
あるいは、
ブレーキだけ踏んでアクセルを完全に離す
というような二択ではありません。先に説明した通りですね。
むしろ身体では、
『アクセルとブレーキの両方にある程度足をかけながら、その場面に応じて踏み加減を変えている』
くらいのイメージのほうが近いです。自動車ではアクセルとブレーキを同時に踏むなんてことはありませんよね。なので自律神経についてでこのたとえをすると、どちらか一方という解釈になりがちなことがわかるかと思います。
さらにややこしいことに、臓器によっては「アクセルとブレーキ」の両方が同じように存在するわけでもありません。
血管や汗腺のように、主に交感神経の影響が大きい場所もあります。
ですから、
『アクセルとブレーキという例えは、自律神経の入口を理解するには便利だけれど、仕組みそのものを正確に表しているわけではない』
ということですね。
「どっちが強いか」より「必要な調整ができているか」
ここまで整理すると、自律神経で本当に大切なのは、
『交感神経と副交感神経のどちらが強いか』
だけではないことが見えてきます。
たとえば、
・運動中なら交感神経の働きが高まるのは自然です。
・食後なら消化に向いた調節が必要です。
・眠る前なら休息に向いた状態へ移っていく必要があります。
つまり、
『その場面で必要な身体の状態へ、うまく変化できているか』
のほうが重要です。
だから、
・交感神経優位=悪い
・副交感神経優位=良い
でもありません。
『50対50=健康』
でもありません。
身体は常に、
「今、何が必要なのか」
に応じて働き方を変えています。これが恒常性維持機能というものです。
働き方を調整しながら身体の状態を安定に保とうとする、だから常に状況に合わせて変化するもの。
自律神経というのは、二つの神経が勝ち負けを競っているシステムではなく、
『状況に応じて身体全体を微調整しているシステム』
と考えるほうが、ずっと実態に近いと思います。
「昼は交感神経、夜は副交感神経」だけではない
よく、
昼=交感神経
夜=副交感神経
とも説明されます。
生活リズムをイメージするにはわかりやすいのですが、
『昼間は交感神経しか働かない、夜は副交感神経しか働かない』
という意味ではありません。
両方とも24時間働いています。
身体の状況や臓器ごとに活動量が変わりながら、必要な状態を作っています。
たとえば昼間でも、
・食事をすれば消化管は動きます。
逆に夜でも、
・トイレへ立ったり、突然大きな音がしたりすれば、血圧や心拍を調節する必要があります。
ですから、
『交感神経と副交感神経は、時間帯だけで完全に切り替わる二つのスイッチではない』
と覚えておくとよいと思います。
ここも、アクセルとブレーキにたとえてしまうと誤認識してしまいがちですね。
自律神経は身体のどこに関係している?
自律神経がわかりにくい最大の理由は、
『関係している範囲が広すぎる』
ことだと思います。
主なところだけでも、
- 心臓
- 血管
- 気道
- 胃腸
瞳孔 - 涙腺
- 唾液腺
- 汗腺
- 膀胱
などがあります。
つまり、「自律神経」と言われたときに症状が一つに決まらないんですね。
・動悸として感じる人もいる。
・胃腸症状として感じる人もいる。
・発汗や冷えとして感じる人もいる。
・血圧調節に関係することもある。
だからこそ便利な言葉でもあり、同時に非常に誤解されやすい言葉でもあります。
自律神経と血圧
以前の記事で、『迷走神経反射』について整理しました。
あの記事でも自律神経が大きく関わっていました。
私たちは立ち上がったとき、重力によって血液が下半身へ移動します。
それでも通常は倒れません。
身体が血圧の変化を感知して、心拍や血管の収縮などを調整しているからです。
この血圧調節にも自律神経が関わっています。
つまり、自律神経は、
『身体を活動させるためだけではなく、立っているだけでも血圧を保つために働いている』
んですね。
一方、迷走神経反射では、痛みや恐怖、長時間の立位などをきっかけとして、血圧や心拍数が低下する方向へ自律神経反射が起こることがあります。
その結果、
- めまい
- 冷汗
- 吐き気
- 脱力感
などが出て、さらに強ければ血管迷走神経性失神へ至ることがあります。
▶迷走神経反射について詳しくはこちら
【内部リンク】
自律神経と胃腸
自律神経と聞いて、
「ストレスでお腹が痛くなる」
という話を思い浮かべる方も多いと思います。
消化管の動きや消化液の分泌にも、自律神経が関わっています。
一般的には、
交感神経
→ 消化管活動を抑える方向
副交感神経
→ 消化管活動を促す方向
へ働きます。
ただし、
「ストレス=交感神経=下痢」
という単純な一本線ではありません。
胃腸は自律神経だけで動いているわけではなく、消化管独自の神経系、ホルモン、免疫、食事内容、病気など多くの要素が関わっています。
脳と腸は双方向につながっている――脳腸相関
胃腸の話では、もう一つ知っておきたい言葉があります。
『脳腸相関』
です。
これは、脳から腸へ一方的に命令が出ているという意味ではありません。
脳と腸は、
- 自律神経
- ホルモン
- 免疫
- 腸内環境
などを介して、お互いに影響を与え合っています。
たとえば緊張するとお腹が痛くなる。
逆に、腸の調子が悪いと気分まで落ち着かなくなる。
こうした現象も、脳と腸が双方向にやり取りしていることと関係しています。
ここで少しややこしいのが、
『自律神経の影響=必ず下痢になる』
というわけではないことです。
腸の動きが過敏になりすぎたり、内容物を送り出す動きが強くなりすぎたりすると、便が十分に水分を吸収する前に進み、軟便や下痢に傾くことがあります。
逆に、腸の動きが緩慢になりすぎると、内容物が長く腸内にとどまり、水分がより多く吸収されることで、便秘に傾くことがあります。
つまり、
『自律神経の影響を受けているから下痢』
とも、
『副交感神経が働いているから必ず腸が元気』
とも単純には言えません。
腸は、
・動きが強すぎても困る。
・弱すぎても困る。
その人の状態や、食事、炎症、薬剤、ストレス、腸内環境など、いろいろな要素が重なって症状が決まります。
だからこそ、
「ストレスでお腹を壊した」
という一言の裏側にも、実際にはかなり複雑な仕組みがあるんですね。
ここはIBDでも特に重要です。
クローン病や潰瘍性大腸炎の腹痛や下痢は、炎症そのものによって起こる場合があります。
・自律神経やストレスが症状へ影響する可能性と、
・病気そのものの炎症
は分けて考える必要があります。
自律神経と体温調節
暑いと汗をかきます。
寒いと皮膚の血流を減らし、熱を逃がしにくくします。
こうした体温調節にも自律神経、とくに交感神経が関係しています。
夏の記事で、
- 暑さ
- 発汗
- 脱水
- 睡眠
- 疲労
などを何度も扱ってきましたが、ここにも自律神経が顔を出しています。
ただし、
「暑さで体調を崩した=自律神経の乱れ」
と決めつけてはいけません。
熱中症や脱水など、明確に別の問題として対応が必要な場合があります。
自律神経と睡眠
睡眠にも、自律神経の活動変化が関係しています。
一般的には、覚醒して活動している時間帯には交感神経活動が高まりやすく、休息や睡眠へ向かう時間帯では副交感神経側の働きが強まりやすくなります。
ただし、睡眠は自律神経だけで決まっているわけではありません。
- 体内時計
- 睡眠圧
- 光
- 生活時間
- 精神状態
- 病気
- 薬剤
など、多くの仕組みが関係します。
なので、
『眠れない=自律神経が乱れている』
とも一律には言えません。
自律神経という一語に全部をまとめるより、
『何が眠りを邪魔している可能性があるのか』
を一つずつ考えるほうが大切です。
自律神経とストレス
自律神経の話でもっともよく出てくるのが、
『ストレス』
だと思います。
ストレスを受けると、身体はその刺激へ対応しようとします。
- 心拍数が上がる。
- 血圧が変化する。
- 汗が出る。
- 筋肉が緊張する。
- 胃腸の調子が変化する。
こうした身体反応の一部に自律神経が関与しています。
ただし、ここも重要です。
『ストレス反応=自律神経だけの仕事ではありません。』
- ホルモンも関わる。
- 免疫も関わる。
- 脳も関わる。
だから、
「ストレスで自律神経が乱れた」
という言葉は間違いとは限りませんが、それだけですべてを説明したことにはならないんですね。
では「自律神経が乱れる」って何?
ここが一番難しいところです。
日常では、
「最近、自律神経が乱れていて」
という言葉をよく使います。
でも、
『自律神経が物理的にバラバラになった』
という意味ではもちろんありません。
医学的には、自律神経の機能に異常がある病気も存在します。
一方、一般会話や健康情報で使われる「自律神経が乱れる」はもっと広く、
『交感神経と副交感神経の活動や切り替え・調節が、その場面にうまく合わなくなっているような状態』
をイメージして使われることが多い言葉です。
ただし、ここで注意したいことがあります。
「交感神経と副交感神経が50対50なら健康」ではありません。
そもそも状況によって必要な働き方が違います。
走っている最中に副交感神経優位になればよいわけではない。
眠ろうとしているのに強い覚醒状態が続くのも困る。
大切なのは、
『その場面に必要な調節ができること』
です。
つまり「バランス」というより、
『適切に変化できる柔軟性』
と考えたほうがイメージしやすいかもしれません。
「副交感神経を上げれば健康」でもない
自律神経はどういう状態が健康的といえるの?そうした疑問は出てくるかと思います。これは働きの理解より先行した健康意識ですね。
ここで大切なのは、理解の順番を間違えてはいけないということかと思います。
健康情報では、
「副交感神経を高めましょう」
という表現もよく見ます。
もちろん、慢性的に緊張している人に休息を取ることは大切です。
でも、副交感神経そのものが「善」で、交感神経が「悪」というわけではありません。
交感神経がなければ、
・運動できません。
・急な危険へ対応できません。
・立ち上がったときに血圧を保つことも難しくなります。
逆に、副交感神経系が関係する反射によって、血圧や心拍数が低下する血管迷走神経性失神のような現象もあります。
ですから、
『交感神経=悪者』
『副交感神経=善玉』
という捉え方はしないほうがよいでしょう。
どちらも必要であり、繰り返しになりますが、常に状況に合わせた調整を行なっている状態が健康的、といえるでしょう。
「自律神経を整える」という言葉も少し慎重に
これもよく見る表現ですね。
「自律神経を整える食べ物」
「これだけで自律神経が整う」
「○分で自律神経を正常化」
など。
自律神経は非常に多くの臓器や機能に関係しているため、
『一つの食品や一つの行動だけで、自律神経全体が簡単に正常化する』
というほど単純ではありません。
一方で、
- 十分な睡眠
- 適度な運動
- 休息
- 極端に乱れない生活
- 過度なストレス状態を続けない
といった生活習慣が、身体全体の調節を支えることには意味があります。
つまり、
「○○をすれば自律神経が治る」
ではなく、
『身体が調節しやすい条件を整える』
くらいに考えるのがよいと思います。
自律神経は自分で直接操作できない。でも間接的には影響を与えられる
「自律」という名前の通り、自律神経は基本的には自分の意思だけで直接操作できません。
「今から心拍数を60にしよう」
「胃をもっと動かそう」
と命令することはできません。
でも、自律神経へ影響する身体の条件を変えることはできます。
たとえば、
- 横になる
- 休む
- 呼吸を整える
- 運動する
- 睡眠を取る
- 暑い場所から移動する
- 水分を補給する
などです。
つまり、
『自律神経そのものを手動操作するのではなく、自律神経が反応する環境を変える』
というイメージですね。
「それって自律神経を整えるってことじゃないの?」
と思うかもしれません。言葉遊びのようですがそうではなくて、
『直で自律神経を整えるではなく、自律神経が自然と整いやすい行動を取る』
ですね。つまり『結果として自律神経が整うことに結びつくような行いをする』という意味で、似てて違います。過程を省略して結果と結びつけて簡単な答えにしてしまうのは、健康に関しては何事も望ましくありません。
原因と相関と因果、これははきちんと切り分けて正しく理解することが大切かと思います。
自律神経失調症という言葉について
「自律神経失調症」という言葉もよく知られています。
- 動悸
- 頭痛
- めまい
- 胃腸症状
- 発汗
- 不眠
- 疲労感
など、非常に幅広い症状について使われることがあります。
ただ、ここは少し強めに注意したいところです。
症状がいくつか当てはまるからといって、自分で「自律神経失調症だ」と決めつけないほうがよいと思います。
なぜなら、似た症状は、
- 貧血
- 甲状腺の病気
- 不整脈
- 低血圧
- 感染症
- 睡眠障害
- 薬剤の影響
- 消化器疾患
- 神経系の病気
など、まったく別の原因でも起こるからです。
そして実際には、
『別の不調が先に起こり、その結果として自律神経の調節にも影響している』
という場合もあります。
ですから、
症状が多い
↓
原因がよくわからない
↓
たぶん自律神経
↓
だから自律神経失調症だ
と飛躍しないことが大切です。
自律神経は非常に多くの身体機能へ関わっているからこそ、
『便利な説明になりすぎる危険』
もあります。
「自律神経かもしれない」と考えること自体は悪くありません。
ただし、それを最終回答にせず、
ほかに原因がないかを確認する、という視点は持っておきたいところです。
そして当たり前ですが診断ができるのは医師だけであるということを忘れないように心がけることも大切です。
自律神経の不調は、一本線ではなく「絡み合い」で考える
ここまで読んで、
「結局、自律神経ってどこまでが原因なの?」
と思う方もいるかもしれません。
ここは日常的なイメージとしては、
『一つの原因から、一つの症状だけが出る』
と考えないほうがわかりやすいと思います。
たとえば、
パターン①
自律神経の調節がうまくいかない
↓
動悸や発汗、胃腸症状などが出る
という場合もあるかもしれません。
でも、
パターン②
自律神経の調節
+
睡眠不足
+
脱水
+
ストレス
など、いくつかの要因が重なって症状が出ていることもあります。
さらに逆方向もあります。
パターン③
感染症や慢性的な痛みなど、別の不調が起こる
↓
身体がストレス状態になる
↓
自律神経にも影響する
↓
動悸や発汗、胃腸症状など別の不調が加わる
ということもありえます。
つまり、
『自律神経が原因になることもあれば、途中に入ることもある。』
『別の病気の影響を受ける側になることもある。』
ということですね。
さらに現実では、
Aという不調
↓
自律神経へ影響
↓
Bという症状
↓
そのBがストレスになる
↓
さらに自律神経へ影響
↓
Cという症状
というように、悪循環になる場合もあります。
だから、
「自律神経が原因です」
という一言だけでは、身体の状態をすべて説明できないことが多いんですね。
一般向けのイメージなら、
『自律神経は単独で原因になることもあるけれど、いろいろな不調の途中にある「交差点」のような存在でもある』
と考えるとわかりやすいかもしれません。
・いろいろな道路が自律神経という交差点を通る。
・そこで渋滞することもある。
・別の場所で起きたトラブルが、この交差点まで波及することもある。
・逆に、この交差点の混乱が別の道路へ影響することもある。
そんなふうに、
『一方向ではなく、いろいろな要因が行き来する場所』
として捉えると、自律神経の複雑さが少しイメージしやすくなると思います。
迷走神経反射も自律神経の一例
先の記事で扱った迷走神経反射は、自律神経の働きを考えるにはかなりわかりやすい例です。
- 痛み
- 採血
- 強い緊張
- 長時間の立位
こうした刺激をきっかけとして、自律神経反射によって血圧や心拍数が低下し、
- めまい
- 冷汗
- 吐き気
- 脱力感
などが現れ、強ければ血管迷走神経性失神へ至ることがあります。
つまり、
『精神的な出来事や身体への刺激が、実際の血圧や心拍数という身体反応へつながることがある。』
自律神経が「心と身体の間」にあるように感じる理由の一つですね。
▶迷走神経反射について詳しくはこちら
【内部リンク】
過呼吸でも自律神経が登場する
次の記事で扱う予定の過呼吸・過換気でも、緊張や不安などによる身体のストレス反応が関係する場合があります。
ただし、ここも注意が必要です。
『過呼吸=自律神経の乱れ』
ではありません。
過換気が起こると、必要以上に二酸化炭素を排出することで、
- めまい
- しびれ
- 息苦しさ
などが起こります。
自律神経はその背景に関わることがありますが、症状そのものを生む中心的な仕組みには、
『呼吸による二酸化炭素の変化』
があります。
こちらは別の記事で整理します。
▶過呼吸・過換気について詳しくはこちら
【内部リンク予定】
「全部、自律神経のせい」にしない
ここまで読んでくると、
「じゃあ身体の不調って、ほとんど自律神経が関係してるじゃん」
と思うかもしれません。
実際、自律神経は非常に多くの身体機能に関わっています。
だからこそ注意したいのが、
『なんでも自律神経で説明してしまうこと』
です。
動悸なら、
- 不整脈
- 貧血
- 甲状腺機能
- 薬剤
などもあります。
めまいなら、
- 耳の病気
- 血圧
- 貧血
- 神経系
などもあります。
胃腸症状なら、
- 感染症
- 炎症
- 消化器疾患
- 薬剤
などがあります。
疲労や不眠も同じです。
「自律神経が関係する可能性がある」
と、
「原因は自律神経だ」
には大きな差があります。
ここは健康情報を読むうえで、かなり大切なところだと思います。
『自律神経が関わってることは大いにある、けれども自律神経だけのせいとは限らない、他にも要因が重なっていることが多い。』
こうして受け止めることが大切かと思います。
自律神経の症状は何科へ行けばいい?
ここはかなり疑問になるかと思いますが、またこれも一律には言いにくいです。これは症状や原因によって違います。
・動悸や胸部症状なら循環器。
・胃腸症状なら消化器。
・めまいなら耳鼻咽喉科や神経内科など。
強い発汗やホルモン異常が疑われる場合は、内分泌系を調べることもあります。
そして、ストレスや不安、睡眠などとの関係が強い場合には、心療内科などが関わることもあります。
つまり、
「自律神経科」という一つの入口へ全部集めるものではない
ということですね。
何科かわからない場合は、まずかかりつけ医や内科へ相談して振り分けてもらう方法でもよいと思います。
日常生活でできること
自律神経は、自分の意思で直接ON・OFFできません。
なので、
「自律神経を絶対に乱さない生活」
というものも現実的ではありません。
むしろ、
『身体が調節しやすい条件を整える』
くらいに考えるのがよいと思います。
たとえば、
- 睡眠を確保する
- 食事を極端に乱さない
- 適度に身体を動かす
- 長時間同じ姿勢を続けすぎない
- 脱水を避ける
- 休息を取る
- 過度なストレス状態が続いているなら環境を見直す
などです。
すべて完璧にやる必要はありません。
身体はそもそも、多少の変化へ対応するようにできています。
重要なのは、
『ずっと負荷がかかり続けている状態を放置しないこと』
だと思います。
自律神経は「身体の自動調整システム」
ここまでかなり長くなりました。
なので最後に、一番簡単なイメージへ戻します。
自律神経とは、
『身体を自動で調整している神経システム』
です。
そして、
・交感神経
・副交感神経
という二つの系統を中心に、
- 心拍
- 血圧
- 血管
- 発汗
- 消化
- 排尿
- 体温調節
などを、そのとき必要な状態へ調整しています。
交感神経が悪いわけではありません。
副交感神経が良いわけでもありません。
50対50が理想でもありません。
大切なのは、
『必要なときに、必要な方向へ身体を変化させられること。』
これです。
まとめ
自律神経は、心臓、血管、胃腸、発汗、体温調節、排尿など、私たちが意識しなくても身体を維持するために働いている神経系です。
大きく、
・交感神経
・副交感神経
に分けられます。
交感神経は活動や緊張に対応する方向へ。
副交感神経は休息や消化に適した方向へ。
ただし、
交感神経100・副交感神経0
あるいは、
副交感神経100・交感神経0
のように片方だけが働くわけではありません。
両方とも働きながら、その場面に応じて働き方が変化しています。
ですから、
・交感神経=悪
・副交感神経=善
でもありません。
50対50=健康
でもありません。
そして「自律神経が乱れる」という言葉も、
一つの原因から一つの症状が出る、というほど単純ではありません。
自律神経そのものが症状の原因になることもある。
別の不調と重なって症状を強くすることもある。
別の病気や身体状態によって、自律神経の働きが影響を受けることもある。
さらに、それによって出た症状が新たなストレスとなり、また自律神経へ影響することもあります。
つまり自律神経は、
『身体の中のさまざまな情報が行き来する交差点のような存在』
でもあるんですね。
だからこそ、
「原因がわからないから自律神経」
と簡単に決めつけないことも大切です。
自律神経という言葉を、
「なんでも説明できる便利な言葉」
にするのではなく、
『身体がどうやって自分自身を調整しているのかを理解するための土台』
として考える。
そのくらいが、自律神経を日常の中で理解するにはちょうどよいと思います。
今回はとても難しい自律神経について総まとめをしました。なるべく各種専門分野へ枝分かれさせないで一般的にわかりやすい部分にまとめたつもりですが、全部を理解することは難しいと思います。
ただ、もし、「あー、自律神経が乱れてるなぁ」と感じることがあったときに、この記事を思い出し、再読していただけたら幸いです。きっと日常へ活かせるかと思います。
そして次は、この自律神経やストレス反応とも関係する、
「過呼吸・過換気」
について整理してみたいと思います。
参考
この記事では、自律神経系の基本構造、交感神経・副交感神経と各臓器の働きについて、厚生労働省の資料を参考に整理しています。
参考:厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き 第2章 人体の働きと医薬品」
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